【ニュース解説】ナフサ不足と価格改定が示す、建築業界の構造的脆弱性

内装業界とナフサ、リスクをどう回避するか

中東ショックが露わにした建築業界の調達リスクと価格構造の限界

中東情勢の影響でナフサ由来のシンナーが品薄・高騰。塗装業界の55%がシンナー入手困難と回答し、業界団体が国交省に支援を要望。住宅建築やインフラ工事の遅延が現実味を帯びている。

元記事:

中東情勢が住宅建築にも影、シンナーや塗料が品薄・高騰…業界団体「政府発表と現場の供給網には大きな乖離」

取引価格改定に関するお知らせ ー サンゲツ

概要

何が起きたか(事実) 中東情勢の緊迫化を背景にナフサ由来のシンナーが品薄・高騰し、塗装業界団体が政府に支援要望書を提出。TOTOはユニットバスの新規受注を停止。

本質(構造) 政府は供給量自体は足りているとするが、流通中流域での出荷半減が現場の不足を引き起こしており、政府発表と現場実態の間に大きな乖離が生じている。

現場への影響(影響) 回答業者の55%がシンナー入手不可、8割以上が工期遅延を懸念。在庫余力のない中小塗装業者を中心に、5月中旬以降の工期延長・倒産リスクも浮上。

今後どうなるか(変化) 7月1日受注分から壁装材・床材・接着剤等が18〜30%値上げとなる見込みで、原材料高騰が続けばさらなる改定も。供給正常化の目途が立たなければ住宅・インフラ工事全体への波及が避けられない。

当NPOの理事がこのニュースを分かりやすく解説

■ 本件により業界は何が変わるのか

「当たり前」だった調達環境が、もう戻らない可能性がある

7月1日受注分から壁装材・床材・接着剤等が18〜30%値上げとなる。これ自体は「価格改定通知」として処理できる範囲だが、問題はその前提にある。

シンナーが「手に入らない」と答えた事業者が55%に上り、TOTOはユニットバスの新規受注を停止した。価格の問題ではなく、物が動かない状態が現場で起きている。在庫を持つ余裕のない中小塗装業者が先に詰まり、職人を抱える真っ当な会社ほど早く影響を受ける構造は、コロナ禍と同じ矛盾をはらんでいる。

■ この動きの本質はどこにあるのか

価格の硬直性と、備蓄義務の放棄が重なった帰結

1993年にナフサの備蓄義務が外され、調達リスクは業界の自己責任に委ねられた。その後、ナフサ起因の値上げは今回で三度・四度目と言われるが、構造は何も変わっていない。「政府発表と現場の供給網には大きな乖離がある」という業界団体の言葉は、制度設計の失敗を端的に示している。

もう一点、今回の値上げが「下代(業者間取引価格)」のみの改定であり、メーカー希望小売価格にあたる「上代」が据え置かれている点も見過ごせない。材料そのものの価値が上がっているにもかかわらず、表示価格が変わらないのであれば、物の価値が正しく市場に伝わらない。安値競争から脱却できないまま、コスト構造だけが悪化する。業界が長年抱えてきた価格決定プロセスの脆弱性が、今回のショックで一気に露呈した形だ。

■ 建築業界は今後どこに向かうのか

価格の流動性と、供給責任の再設計が問われる

原材料価格が動く以上、カタログ単価を固定し続ける流通構造には無理がある。ガソリンスタンドが日々価格を更新するように、建材においても価格決定のプロセスそのものを見直す議論が必要だ。デジタルカタログの導入といった表層的な対応ではなく、価格決定の仕組みを構造から変えることが求められる。

また、今後の課題は単に「値上げをどう説明するか」ではない。なぜ上がったのかを先様に丁寧に説明する責任は当然あるが、それと同時に、施工の技術や品質に見合った適正な価格水準を業界全体で合意形成していくタイミングでもある。コロナ・リーマンショック級の波が静かに来ている可能性がある今、短期の対応と中長期の構造改革を、同時に動かせるかが問われている。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。




【ニュース解説】RIZAP建設参入が問う、建築業界の構造転換

ライザップの業界参入について解説

RIZAP建設が外販参入——建築業界の構造問題に、異業種の論理が切り込む

RIZAPがchocoZAP1,020店舗出店で培った独自の建設スキームを外部企業向けに提供開始。コスト25〜30%削減・工期2倍速を武器に、建設業界の 人手不足 と多重下請け構造に切り込む。

元記事:

 ライザップ建設

 【RIZAP建設 始動】建設業に本格参入 1年で1,020店舗出店の「ギネス世界記録™」を支えた独自スキームを外販

概要

何が起きたか(事実) RIZAPグループがchocoZAPの大量出店ノウハウをもとに、RIZAP建設を通じた外販事業を本格始動。

本質(構造) 製造直輸入・職人内製・直接発注による「多重下請け排除モデル」で、業界の構造的コスト高に対抗。

現場への影響(影響) 既に半年で186件を受注しており、他業態の店舗開発コストと工期に対して実質的な価格圧力が生じている。

今後どうなるか(変化) 500人規模の リスキリング で建設人材を内製化し、業界の「2040年問題」に対応する人材プラットフォームへの転換を目指す。

当NPOの理事がこのニュースを分かりやすく解説

■ 本件により業界は何が変わるのか

「安い・早い」の可視化が、競争軸を塗り替える

RIZAP建設が打ち出した数字——コスト25〜30%削減、工期2倍速——は、業界内で長らく「交渉の余地」として曖昧に扱われてきた領域を、定量的に可視化したという点で重要だ。多重下請け構造によって生じていたコストの不透明さは、発注者側にとって比較基準すら持てない状況を生んでいた。今回の外販参入は、その基準点を市場に提示したことになる。

加えて、トレーナー500人のリスキリングという打ち手は、単なる人員活用ではない。目標設定・進捗管理・相手を動かすコミュニケーションを職業的に鍛えてきた人材が現場に入ることで、工程管理や職人間の調整といった「暗黙知で回ってきた領域」に変化が生じる可能性がある。

■ この動きの本質はどこにあるのか

異業種参入ではなく、「業界の構造読み替え」である

本件を「ジム会社が建設に参入」と読むのは表層だ。本質は、SPAモデル(企画〜施工〜運営の内製化)によって、従来の分業構造を再設計したことにある。

直取引・直雇用・直発注の三直構造は、中間マージンの排除というより、各工程の価値を自社内に取り込む垂直統合の試みだ。ここで冷静に問い直すべきは、「中間を省けば業界は健全になるか」という命題だ。実際の現場では、工程調整・品質管理・事故リスクの吸収といった目に見えにくい価値が、下請け各層に分散して存在している。それらをどう内製し、育成するかが、このモデルの持続性を左右する。

RIZAPが1,020店舗で積み上げたノウハウは本物だが、均質な店舗仕様を前提とした標準化と、多様な案件への対応力は別の話だ。適正品質の射程がどこまで広がるかは、今後の実績が答えを出す。

■ 建築業界は今後どこに向かうのか

「暗黙知の業界」から「説明できる業界」へ

この動きが業界に与える最大の影響は、コスト競争の激化よりも、業界のコミュニケーション文化の変容ではないかと見ている。

これまで建設・内装業は、職人の経験則と現場の勘どころ——いわば暗黙知——を核に成立してきた。それ自体に誇るべき価値はある。ただ、その構造が「説明しない文化」「価格の根拠を示さない文化」を温存してきた面も否定できない。

RIZAP的な人材が現場に入ることで、「なぜこの工程が必要か」「この費用の根拠は何か」を言語化・説明する文化が少しずつ醸成されれば、業界全体の信頼性向上につながり得る。それは既存の職人・事業者にとっての脅威であると同時に、次世代に誇れる産業へ進化するための契機でもある。

黒船は常に、内側から変われなかった業界を外から動かす。切磋琢磨の相手として、建設業界がこの動きをどう受け止めるか。その姿勢が、今後10年の産業の品格を決めると考えている。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。




【ニュース解説】 建設業倒産2041件・過去10年最多——価格転嫁できない中小事業者に迫る構造的危機

建設業、建築業の倒産について解説

建設業倒産、過去10年最多——価格転嫁できない事業者が退場を迫られる時代へ

2025年度の企業倒産が1万425件と2年連続で1万件を超えた。建設業は2041件で過去10年最多。物価高・ 人手不足 が中小企業を直撃し、2026年度はさらなる増加が懸念される。

元の記事:

倒産集計 2025年度報(2025年4月~2026年3月)

帝国データバンク、2025年度企業倒産件数1万425件で4年連続増加・2年連続1万件超と発表

概要

何が起きたか 2025年度の企業倒産が1万425件と4年連続増・2年連続1万件超えとなり、建設業は2041件で過去10年最多を記録した。

本質 コスト上昇分を 価格転嫁 できない中小零細企業の体力が限界を迎えており、価格転嫁率42.1%という構造的な弱さが倒産増加の根本にある。

現場への影響 建設業では物価高倒産247件・人手不足倒産112件・後継者難倒産123件が重なり、下請け・中小施工会社を中心に受注機会があっても事業継続できないケースが増加している。

今後どうなるか 原油高騰による建材・資材コストのさらなる上昇に加え、2026年度は賃上げに伴う社会保険料負担増も重なり、夏以降に倒産件数が急増する可能性が高い。

当NPOの理事がこのニュースを分かりやすく解説

本件により業界は何が変わるのか

中小・小規模事業者の淘汰が本格化する局面へ

2025年度の建設業倒産は2041件と過去10年で最多を記録した。注目すべきは件数よりもその内訳だ。負債5000万円未満の小規模倒産が全体の62%超を占め、資本金1000万円未満の事業者が全体の72.7%に達している。これは大手・中堅の経営危機ではなく、現場を支える一次・二次下請け層の体力が限界を迎えていることを示している。

物価高倒産247件、人手不足倒産112件、後継者難倒産123件が建設業に集中している事実は、単なる景気後退の話ではない。コスト構造の変化に対応できる内部体制を持てなかった事業者が、静かに退場を迫られているという現実だ。

この動きの本質はどこにあるのか

価格転嫁できない構造と、可視化されていない経営実態

帝国データバンクの調査では価格転嫁率は42.1%にとどまる。資材費・外注費・燃料費が上昇しても、それを工事価格に反映できていない事業者が半数以上存在するということだ。

この背景には、建設業特有の多層下請け構造がある。元請けとの交渉力を持てない事業者ほど、コスト上昇の吸収を強いられる。さらに深刻なのは、そもそも自社のコスト構造を月次で把握できていない事業者が相当数存在することではないかと考えている。単価管理・原価管理・資金繰りの可視化が遅れていれば、交渉の土台すら作れない。業績の良い会社が月次決算を早く締めるという事実は、経営の健康診断が機能しているかどうかの差でもある。

加えて、コロナ融資で延命した事業者の整理が進んでいることも見逃せない。実態的な競争力を持たないまま存続してきた事業者が、この局面で退場していくという側面もあるだろう。

建築業界は今後どこに向かうのか

レジリエンスを持つ事業体だけが次のサイクルを迎えられる

原油高騰は建材・化学品・輸送コストに連鎖し、今後も資材価格の改定通知が続くことが予想される。この変化のスピードに対応できる事業者とできない事業者の差は、今後さらに広がる。

生き残る事業者の条件として見えてくるのは、交渉力・原価管理・取引先の分散という三点だ。一社依存・一業種依存の事業ポートフォリオは、外的ショックへの耐性が極めて低い。変化への順応力、すなわちレジリエンスを持てるかどうかが、次の建設市場における競争優位の軸になると考えている。

着工数が減少し工事がいったん停滞しても、市場が回復した際には再び 人材不足・資材不足 の波が来る。その波を乗り越えられる体制を、今の静かな時期にどれだけ整えられるか。足を溜めておくことの重要性を、業界全体が問われている局面だと見ている。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

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山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。




【ニュース解説】大工は2035年に15万人へ――国交省とりまとめが示す担い手危機と、業界が問い直すべき「本質的な一手」

建設業の労働人口減少を考察

担い手不足に複合施策で応じる限界――「選ばれる業界」への転換に必要な視点とは

国土交通省が住宅建設技能者の確保に向けた懇談会とりまとめを公表。大工就業者は2035年に15万人まで減少する見通しの中、社員大工化や地域工務店の経営強化など4つの視点で方向性を示した。

元の記事:

住宅建設技能者の持続的確保に向けた中長期ビジョン策定検討委員会 配布資料

「住宅分野における建設技能者の持続的確保懇談会」のとりまとめを公表!

概要

   

何が起きたか(事実)

国交省が住宅建設技能者の持続的確保に向けた懇談会とりまとめを公表し、2035年に大工が15万人まで減少するという見通しを示した

本質(構造)

職人の個人依存・ 一人親方 モデルが限界を迎えており、雇用・育成・経営の構造ごと変えなければ担い手は確保できないという認識が官民で共有された

現場への影響(影響)

社員大工化・CCUSによるキャリア可視化・女性や外国人材の受け入れ整備など、現場の雇用慣行と職場環境の見直しが求められる

今後どうなるか(変化)

官民連携 の中長期ビジョン策定へ移行し、地域工務店の M&A ・アライアンス・DX導入など経営モデルの転換が政策的に後押しされる

当NPOの理事がこのニュースを分かりやすく解説

■ 本件により業界は何が変わるのか

国が「構造問題」として認定した意義は大きい

2035年に大工就業者が15万人まで減少するという推計は、業界関係者にとって驚きではない。しかし国交省がこれを正式にとりまとめとして公表し、「社員大工化の推進」「地域工務店の経営基盤強化」を方向性として明示したことには、一定の意義がある。

これまで担い手不足は現場の問題として処理されてきたが、今回の懇談会は雇用・育成・経営という三層にわたる構造問題として整理した。社員大工化やCCUSによるキャリア可視化、M&A・アライアンスの促進といった方向性は、個社の努力では解決できない課題を政策として扱い始めたサインとして読むべきだろう。

■ この動きの本質はどこにあるのか

施策の多さが、スイッチボタンの不在を示している

とりまとめを読んで率直に感じるのは、課題認識の精度に比べ、打ち手の解像度が低いという点だ。DX推進、女性活躍、外国人材受け入れ、魅力発信——いずれも否定できないが、これだけの施策を並列すると、どれが構造を変える「一手」なのかが見えなくなる。

1990年代のニューヨーク市が犯罪多発の状況を打開した際、有効だったのは複合施策の総量ではなく、構造的なボトルネックを特定し、そこにシンプルに介入したことだった。住宅建設業界にも、同様の問いが必要ではないか。「何をやれば変わるか」ではなく、「何が変われば他が連鎖するか」という問いの立て方だ。

業界が長年抱える本質的な課題は、職業としての憧れの欠如と、努力が報酬に直結しない構造にある。ノルウェーが漁業の担い手不足を解消した際、政府は大型船化と処遇の抜本改善によって「かっこいい職業」に転換することに集中した。PRサイトの構築ではなく、職業の魅力そのものを変えたのだ。今回のとりまとめがその視点に踏み込めているかどうかは、慎重に見極める必要がある。

■ 建築業界は今後どこに向かうのか

官の方針を「刺激」として、民が問いを立て直す局面

国が中長期ビジョンの策定に向けて動き出したこと自体は、業界にとってフォローウィンドになり得る。ただし、政策の実装力には構造的な限界がある。現場の雇用慣行や取引慣行を変えるには、実務を担う事業者・団体が主体的に動く必要がある。

地域工務店の事業承継やアライアンス促進、パネル化・AIの導入といった方向性は、経営の視点から見れば十分に合理的だ。問題は、それを誰がどう実装するかの絵が描かれていない点にある。

建築業界は今、高度経済成長期に固定化された業務構造と雇用モデルの賞味期限が切れる局面を迎えている。国の方針を待つのではなく、業界内の実務者・NPO・教育機関が連携して「本質的なスイッチ」を特定し、提言として形にしていくことが求められている段階だと考える。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

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## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

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【ニュース解説】サンゲツ「イノパネル」が変える壁紙施工の未来――職人不足時代の新建材を業界構造から読む

サンゲツのイノパネルのイメージ画像

「イノパネル」登場で問われる内装業界の構造転換――工程の工場移転と持続可能な施工体制

サンゲツが壁紙と石膏ボードを一体化した新建材「イノパネル」を発売。パテ処理・ビス留め不要で、100㎡あたり約180分の 工期短縮 を実現。職人不足・ 高齢化 が進む建設現場の課題に応える。

元の記事:壁紙+石膏ボードを一体化、パテ処理・ビス留めが不要に

 

概要

   

何が起きたか(事実)

サンゲツが壁紙一体型石膏ボード「イノパネル」を発売し、パテ処理・ビス留めなど現場工程を省略可能にした

本質(構造)

職人依存の内装施工を工業化・規格化することで、技能なしでも一定品質を担保できる仕組みへ転換

現場への影響(影響)

施工時間・騒音・技能要件が大幅に低減され、少人数・短工期での内装仕上げが現実的になる

今後どうなるか(変化)

同様の「工場完成品+現場レス」アプローチが内装材全般に広がり、職人不足への構造的対応として標準化が進む可能性がある

 

当NPOの理事がこのニュースを分かりやすく解説

■ 本件により業界は何が変わるのか

施工プロセスの「工場移転」が本格的に始まった

サンゲツのイノパネルが示す最大の変化は、効率化という表層の話ではない。これまで現場職人の手作業で支えてきた「下地補修→糊付け→壁紙施工」という一連の工程を、工場側に移転するという構造転換だ。

100㎡あたり約180分の短縮という数字よりも重要なのは、施工品質が職人の熟練度に依存しなくなるという点である。パテ処理やビス留めが不要になることで、技能レベルの差が仕上がりに直結しにくくなる。 人手不足 が常態化する現場において、これは実務上の意味が大きい。

■ この動きの本質はどこにあるのか

バリューチェーンの再編と、素材メーカーの川下進出

本件を単なる新建材の発売として見るのは浅い。サンゲツ・フジプレアム・吉野石膏という三社連携の構造に、業界再編の予兆が見える。

従来、壁紙メーカーと石膏ボードメーカーは川上・川下で棲み分けており、現場施工は内装業者が担ってきた。イノパネルはその境界を意図的に溶かしている。吉野石膏のスマートJG工法との連携は、競合ではなく取り込みに近い。流通・施工体制を含めた既存の バリューチェーン が、中長期的に再構成されていく可能性がある。

また、「誰が施工するのか」という問いは未解決のままだ。大工か、内装職人か、あるいは新たな施工専門業者か。ここが整理されるまでは、大規模商業施設や工場など、均一面積が広い現場での先行導入にとどまるだろう。

■ 建築業界は今後どこに向かうのか

「規格化と個別対応」の両立が、次の競争軸になる

イノパネルの課題は、オーダーメイド性にある。現場の壁はそれぞれ異なり、規格品だけで全てを完結させることは難しい。Dボード が採寸精度を生命線としてきたように、本商品もイレギュラーな現場への対応力が普及の鍵を握る。

この動きはアジャイル的な市場投入と捉えられる。まず規格品でMVPを出し、市場の反応を見ながら仕様を洗練させていくサイクルだ。フィジカルAIなど計測・自動化技術との接続が進めば、採寸精度の課題は技術的に突破できる可能性がある。

総論として、「材料+技能」で成立してきた内装施工の在り方は、「製品+取付」へと移行しつつある。この流れは不可逆であり、業界の持続可能性という観点から見れば歓迎すべき方向性だ。選択肢が増えることが、まず第一歩になる。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

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## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

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【ニュース解説】内装業界3社が健康経営優良法人2026に認定——人的資本経営が業界の持続性を左右する時代へ

建設業の人的資本について考察

内装業界に広がる健康経営——3社認定が示す、人的資本経営の実装と業界持続性の関係

トーソー・サンゲツ・デコリアの3社が「健康経営優良法人2026」に認定。内装業界でも人を経営資源と捉える動きが広がり、職務満足度の数値改善など実績を伴った取り組みが評価されている。

元の記事:

デコリア 健康経営優良法人2026「ブライト500」に認定


概要

(事実)内装業界の主要3社が健康経営優良法人に認定

(本質)福利厚生から「経営戦略としての人的資本管理」へのシフト

(影響)採用・定着・品質維持に直結する組織づくりが現場競争力を左右

(変化)担い手不足が深刻化する中、健康経営の実装が業界の持続性を分ける

当NPOの理事がこのニュースを分かりやすく解説

■ 本件により業界は何が変わるのか

「いい会社」の定義が、印象から実績へと移行しつつある

トーソーの健康経営優良法人認定(大規模3年連続・7年連続)、そしてデコリアのブラインド500認定は、インテリア・内装業界においても人的資本経営の可視化が始まっていることを示している。デコリアでは職務満足度が56%から78%へと上昇しており、これは単なる福利厚生施策の結果ではなく、事業成長と組織状態の連動を示す数値として注目に値する。

健康経営認定が「広報的な活動」に留まらず、採用競争力・離職防止・品質維持という実務的な経営課題への対応手段として機能し始めている点が、今回のニュースの本質的な変化といえる。

■ この動きの本質はどこにあるのか

担い手不足・高齢化・技能継承という構造課題への、組織論からのアプローチ

内装業界が直面している課題は明確だ。担い手不足、技能者の  高齢化 、技能継承 の断絶、そして 人手不足 による倒産の増加——これらは建設・物流分野で特に顕在化している。

こうした構造の中で、健康経営や職務満足度の向上は「エッセンシャルワーカーをいかに確保・定着させるか」という問いへの、現実的かつ実践的な回答になりつつある。採用形態でも新卒36%に対し中途52%という傾向が示すとおり、人材市場の質的変化に対応するには、既存社員の満足度と定着率を高める組織づくりが先決となる。

デコリアの「全社員職人化計画」——自社製品を実際に施工体験することで商品価値を内側から理解させる取り組み——は、エンゲージメントと品質意識を同時に高める好例であり、業界の実務に根ざした人材戦略として評価できる。

■ 建築業界は今後どこに向かうのか

バリューチェーンの再構築と、「誰のための健全化か」という問い

一方で、大手が健康経営を標榜しながら、下請け・ 一人親方 への単価が実態として低下しているという構造矛盾は依然として残る。積水ハウスのような大手による職人の直接雇用・社員化の動きは、 バリューチェーン を一つの組織内で完結させようとする一つの方向性であり、業界再編の予兆とも読める。

加えて、中東情勢に連動した原油・塗料・壁紙素材の供給リスクは、製造から施工に至るバリューチェーン全体を揺さぶる外部変数として注視が必要だ。

業界の持続性は、商品・施工技術の高度化だけでは担保されない。働く一人ひとりの状態が内装品質を支えているという認識のもと、組織・採用・技能継承を統合的に設計できる企業が、次の競争優位を獲得していくと考える。NPOとしても、この観点を業界内の対話に組み込んでいく必要がある。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

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## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。




【ニュース解説】物価高騰が直撃する建設業――価格転嫁できない構造と、業界が向かう先

倒産件数の増加を解説

建設業を揺さぶる原価高騰――構造問題と事業転換の分岐点

建設業界で原価高騰が深刻化しています。資材・人件費・燃料費が同時に上昇する中、 価格転嫁 できない構造的な問題が中小企業の経営を圧迫し、地域インフラの維持にまで影響が及んでいます。

元の記事:物価高時代に揺れる建設業 ― 原価高騰が現場に与える現実とは

概要

   

何が起きたか(事実)

資材・労務・燃料費が同時に高騰し、建設業の原価が数年前比で最大2倍近くに上昇

本質(構造)

契約時に価格が固定される公共工事の慣行により、コスト増を売上に転嫁できない構造が温存されている

現場への影響(影響)

中小建設業者を中心に赤字工事・資金繰り悪化が拡大し、地域インフラを担う担い手が失われつつある

今後どうなるか(変化)

大量施工モデルから地域密着・高付加価値型へのシフトが迫られ、価格・調達・受注の構造転換が不可避となる

当NPOの理事がこのニュースを分かりやすく解説

本件により業界は何が変わるのか

原価構造の「見える化」が待ったなしになった

2021年比で建築資材が38〜41%上昇しているという事実は、もはや一時的な価格変動ではない。資材・労務・燃料という原価の三要素が同時に上昇し続けている現状は、「コストを吸収しながら受注する」という従来の事業モデルが機能しなくなっていることを意味する。

特に深刻なのは、コロナ融資の返済が本格化する中で資金繰りが悪化している中小事業者の増加だ。赤字工事を受けざるを得ない状況が続けば、事業継続そのものが問われることになる。価格をどう積み上げ、どう交渉するかという「原価の可視化と説明力」が、今後の事業継続の鍵になる。

■ この動きの本質はどこにあるのか

問題は価格ではなく、「価格転嫁できない構造」にある

建築という商品の特性上、契約から納品まで長期間を要する。その間に資材価格が変動しても、契約金額は固定されたままというのが公共工事の実態だ。スライド条項という制度は存在するが、実務上の運用は進んでいない。設計単価の見直しも、市場の変化スピードに追いついていない。

これは一企業の交渉力の問題ではない。業界全体の商慣行と制度設計の問題であり、民間の努力だけで解決できる性質のものではない。NPO法人として調査・研究・提言を積み重ねていく必要があるのは、まさにこの構造的な部分だ。

また、特定の大口取引先や大規模案件への依存度が高い事業体ほど、景気変動の影響を直接受けやすい。 バリューチェーン 全体を視野に入れた事業設計の重要性が、あらためて浮き彫りになっている。

■ 建築業界は今後どこに向かうのか

「いかに多く売るか」から「いかに持続するか」へ

大量施工・コスト競争を前提としたモデルは、すでに限界に近づいている。今後の方向性として注目したいのは、地域密着型・高付加価値型へのシフトだ。維持管理や小修繕など、継続的な関係性の中で価値を提供できる領域は、価格変動の影響を受けにくい構造を持ちやすい。

一人親方 や中小事業者が自立できる仕組みを整えることは、個別企業の問題を超え、地域インフラの持続可能性に直結する。経済合理性だけに依拠したモデルが地域商圏を崩してきた歴史を繰り返さないためにも、業界全体として「持続可能な事業設計」を共通のテーマとして据えていく段階にきている。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。




【ニュース解説】新築着工戸数3カ月連続減——「量」から「質」へ、内装業界が問われる事業転換の本質

「量」から「質」へこの業界は転換できるか?

新設住宅着工3カ月連続減が示す構造転換——新築依存から既存住宅の価値向上へ

元記事はこちら:2026年1月の新築着工戸数 前年比0.4%減の5万5898戸

サマリー

国土交通省によると、2026年1月の新設住宅着工戸数は5万5898戸と3カ月連続で減少。 持家 は10カ月ぶりに増加したが、貸家・マンションの落ち込みが全体を押し下げた。

要点

  • 新築着工が3カ月連続減少(事実)

  • 持家回復の一方で貸家・マンション投資が冷え込む二極化構造(本質)

  • 賃貸・マンション系の施工計画見直しが現場に波及(影響)

  • 金利上昇と建設コスト高止まりが続く中、投資用物件の調整局面はしばらく続く見通し(変化)

当NPOの理事がこのニュースを分かりやすく解説

2026年1月・新設住宅着工戸数 前年比0.4%減——「量」から「質」へ、業界転換の分岐点

■ 本件により業界は何が変わるのか

着工数の減少は「異常値」ではなく、構造的な定常状態への移行である

2026年1月の新設住宅着工戸数は5万5898戸(前年同月比0.4%減)と3カ月連続の減少となった。種別で見ると、持家が10カ月ぶりに増加に転じた一方、貸家・分譲マンションは軟調が続いており、単純な「市場全体の冷え込み」とは異なる内訳を示している。

注目すべきは地域差だ。首都圏は総数でプラスを維持しつつもマンションが33.7%減、中部・近畿圏は貸家が大幅減。一方、その他地域では持家・貸家ともに増加している。この非均一な動きは、市場が「総量」ではなく「地域・用途別の需給再編」フェーズに入っていることを示唆している。

■ この動きの本質はどこにあるのか

新築依存型のビジネスモデルが、構造的な限界を迎えつつある

高度経済成長期以来、住宅産業は新築着工数をKPIの中心に置いてきた。しかし人口減少・世帯数の頭打ちという不可逆な流れの中で、着工数の漸減は「景気循環」ではなく「産業構造の転換点」として捉える必要がある。

国もすでに方向を変えている。住宅省エネ2026キャンペーンでは新築だけでなく既存住宅の省エネリフォームを支援対象に加え、国交省も既存住宅の質向上を政策の軸に据えている。この「新築から既存へ」という政策シフトは、業界のビジネスモデルを根本から問い直すシグナルでもある。

加えて、地方都市での コンパクトシティ 化の進行、都市部マンション需要の調整、一戸建て住宅の相対的な底堅さ——これらを重ね合わせると、住宅市場は「量の縮小」と「用途・地域の二極化」が同時進行していると読める。

■ 建築業界は今後どこに向かうのか

「今ある住まいをどう良くするか」を軸とした、価値提供モデルへの転換

今後の業界にとって問われるのは、新築着工数の回復を待つのではなく、 既存住宅ストック の価値向上にどう関与できるかという事業設計の問いだ。 リフォーム ・リノベーション 領域での提案力、省エネ対応の技術習得、そして適正価格での受注構造の構築が、実務上の競争軸になっていく。

また、住宅の耐久性・長寿命化という観点も見落とせない。アパート系の短いスパンでの建て替えサイクルと、一戸建ての40〜50年スパンの維持管理では、関わる業者に求められるスキルセットも収益モデルも異なる。この違いを意識した専門性の分化が、今後の差別化につながるだろう。

NPOとしては、着工数という「量の指標」だけでなく、誰がどんな住環境を支えているのかという「質と担い手の持続性」を継続的に観察・発信していく役割が一層重要になると考える。 技術継承 ・ 適正価格 ・ 担い手育成 ——これらは個社の営利活動だけでは解決しにくいテーマであり、業界横断の場だからこそ議論できる領域だ。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。




【ニュース解説】リリカラ社長交代——壁紙業界に訪れた「売り方の転換点」

リリカラの社長交代は業界再編の序章である

リリカラ社長交代が示すもの——壁紙業界に訪れた「売り方の転換点」

元記事はこちら:代表取締役の異動に関するお知らせ

サマリー

壁紙・インテリア大手のリリカラが、2026年3月27日付で代表交代。副社長の岡田卓哉氏(50歳)が新社長に就任し、山田俊之氏は特別顧問へ。フランフラン出身の異色の経歴が注目される。

要点

  • 何が起きたか(事実) リリカラは3月27日付で、岡田卓哉副社長(50歳)が代表取締役兼社長執行役員に就任し、山田俊之社長が退任した。
  • 本質(構造) 山田俊之氏は2006年から約20年にわたり社長を務めた創業家関係者であり、 l後任の岡田氏はフランフラン(旧バルス)出身のインテリア小売畑のキャリアを持つ外部登用型の人材で、世代・文化の双方で大きな転換を意味する。
  • 現場への影響(影響) リテール・デザイン感覚に強い新トップのもと、BtoCやDX・不動産連携などの成長領域への傾注が加速する可能性があり、従来のデザイン力・物流力に加え、ITやDXを活用した新顧客サービス創出と施工力強化という方針 が現場でより本格的に問われることになる。
  • 今後どうなるか(変化) 山田前社長は特別顧問として残る形 で急激な断絶は避けつつも、岡田体制のもとで小売・空間提案型のビジネス展開が加速するかが今後の焦点となる。

当NPOの理事がこのニュースを分かりやすく解説

リリカラ社長交代が示すもの——壁紙業界に訪れた「売り方の転換点」

業績回復と人事刷新が同時に起きた意味

25年12月期の経常利益が前期比4.6倍の7.2億円に急拡大し、26期も16.9%増の8.5億円を見込むという業績回復のタイミングで、リリカラは経営トップを交代した。新築着工数が落ち込み、壁紙の出荷数量自体も微減が続く中での回復は、主に価格改定によるものだ。数量で稼げない構造の中で利益を出せた——これはある意味、業界の限界と可能性の両方を同時に示している。

この人事の本質はどこにあるのか

「サプライチェーン内人事」からの脱却

壁紙・内装業界では、メーカーや株主など川上のサプライチェーン 内から役員・社長が輩出されるケースが多い。岡田卓哉氏の経歴はその文脈とは異なる。フランフランでの感情体験設計、TKPでの営業・組織運営、そしてリリカラでの副社長としての実績——いずれも「モノを売る」より「場と体験を設計する」側のキャリアだ。

壁紙は本来、暮らしの空間そのものを変える商材である。それにもかかわらず業界では長年、品番・性能・施工性・価格という「スペック軸」での競争が主流だった。岡田氏の就任は、その競争軸を「顧客体験 という軸」へと意図的にシフトさせようとする意思表示と読むのが自然だろう。「遠すぎず、近すぎない」距離感の人材が中枢に入ることで、既存のフレームワークに揺さぶりをかける——業界第2位としての役割は、そこにあると思っている。

建築・内装業界は今後どこに向かうのか

「物売り」から「ライフスタイル提案」への構造転換

ゼロックス(Xerox)がプリンター会社からコンテンツカンパニーへ変わったように、壁紙業界も「壁紙を売る」から「壁紙を通じて何を届けるか」へのシフトが問われる局面に入った。この問いに正面から向き合う事業者がまだ少ない今、業界1位・2位のプレイヤーがその方向に動き出すことの影響は小さくない。

ただし、既存ビジネスの慣性は強い。施工網・流通構造・取引慣行——これらを抱えたまま体験価値軸に舵を切ることは容易ではなく、一筋縄ではいかないことも事実だ。それでも、今回の人事が「象徴」にとどまらず「実装」に至るかどうか。リリカラの次の一手を、業界全体が注目している。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。