住環境工事研究会 理事インタビュー|内装業界の未来を創る

壁紙スクールでの徳田氏の講義

徳田氏に聞く:業界への想いと未来への挑戦

「このままでは内装業界は立ち行かない」──シンコール時代から現場の最前線を見てきた徳田氏は、業界の構造的課題に危機感を抱き続けてきました。職人育成のための壁紙スクール、業務効率化を実現したコールセンター導入、そして今構想する「剥がし屋さん」と内装業の経営支援など。30年以上の経験から導き出された業界改革の具体策と、経営者・職人への熱いメッセージをお届けします。

プロフィール Profiles

語り手

德田 則明 株式会社ビルトゥ
徳田則明

東京都練馬区の株式会社ビルトゥ代表取締役。壁紙スクールを運営し、クロス職人の人材育成に力を注ぐ内装業界のキーパーソン。

聞き手

山口 剛 株式会社遠藤紙店
山口剛

山梨県を拠点に壁紙卸「遠藤紙店」とWALLPAPER STOREを率い、壁紙で暮らしを豊かにするNPO理事。

壁紙スクール誕生秘話──オリンピックという夢と業界への危機感

山口: まず、NPOに入られたきっかけからお聞かせください。

徳田: 2015年に壁紙スクールを始めたんです。東京都室内装飾事業協同組合の新聞に掲載していただいたところ、クロス事業協会の細井さんが偶然目にされて連絡をくださいました。その中にいらした 青木広一 氏から東京で会う機会をいただき、「住環境工事研究会というのもやっているので、ぜひ参加しませんか」と声をかけていただきました。

徳田:当時の理事長は 川井雅樹 氏で、人材育成について検討されていた時期でした。私の壁紙スクールが会にとって何らかの形で貢献できればという思いで声をかけていただき、面白そうだと感じて加盟させていただきました。

山口: そもそも壁紙スクールを始めようと思われた理由は何だったのでしょうか?

徳田: シンコールで働いていた時、取引先が廃業や倒産で減少していく状況を目の当たりにしました。加えて、職人さんの技術レベルについても疑問を感じる場面が出てきていました。空いているスペースがあったので、人材育成ができないかと考えたんです。

徳田:ちょうど東京オリンピックが決まったタイミングでもあり、ここで育成を進めて、選手村のクロス張り替えをみんなでできたら面白いと思いました。

山口: オリンピックを目標に据えるというのは素晴らしい発想ですね。実際の立ち上げはどのように進めたんですか?

徳田: 当初は新聞折り込みで「入学金1万円で6ヶ月間、壁紙の張り方を教えます」という広告を出しましたが、実は一件も問い合わせがなかったんです。

山口: それは厳しいですね。

徳田: そこでやり方を変え、ハローワークの訓練校制度を知りました。助成金センターで情報を得て、ハローワークに相談したところ、4~5ヶ月間の実績が必要とのことでした。

徳田: 並行して助成金を申請し、壁や糊付け機などの道具を揃えました。埼玉県技能士会の会長を務めた吉場先生に講師をお願いし、シンコールの請求書にチラシを入れて実績作りを始めました。

山口: 目標設定について、どのように考えて行動されているんですか?

徳田: まず、今自分にできることは何かを考えます。そして私の行動の核となるのは「業界のため」という視点です。関わっているこの業界で不足していること、困っていること、できないことは何かを常に意識しています。

徳田:職人さんの育成も同様です。業界の方々が不得手としていることが育成だと思うんです。一人親方としてやられている中で、時間的な問題、知識的な問題、技術的な不足があります。その部分を、私の持てる環境の中でアドバイスしたり、お役に立てることはないかと考えています。

山口剛

Point of View

徳田氏の「業界のため」という明確な軸は、多くの経営者が学ぶべき視点です。目の前の売上だけでなく、業界全体の課題を自分事として捉える姿勢が、壁紙スクールという具体的なアクションにつながりました。オリンピックという大きな目標を掲げることで、人材育成に夢と希望を持たせた発想は、内装業界における人材不足解決のヒントになるはずです。助成金やハローワークの仕組みを活用する実務的な手法も参考になります。

切磋琢磨をどう業界内でつくるかが課題

横のつながりが生む刺激──NPOで得た「切磋琢磨」の価値

山口: NPOに入られた当初のイメージと、実際に入ってからの印象について教えてください。

徳田: 正直、最初は何が何だかわかりませんでした。全国にいるメンバーのつながりのキーとなっているものは何なのかと。

山口: 確かに、最初はそう感じますよね。

徳田: 理事長から「この住環境工事研究会のポイントは、実は会議後の飲み会・食事会なんだよ」と教えていただき、そこで会議とは別にコミュニケーションを取りながら助け合っているということを知りました。それで、皆さんが本当に横のつながりを望んで活動されているんだと理解できました。

山口: 入ってみて良かったことは何でしょうか?

徳田: 全国でいろいろな商売をされている方々から刺激を受けられることです。言葉は悪いですが、彼には負けたくない、次に発表するときは恥ずかしくない内容にしたいという思いで、皆さんが切磋琢磨しながら事業を変革しようとする強い意志を感じました。その中で自分自身も大きな刺激を受けています。

山口: NPOに入って良かったですか?

徳田: 悪いことは何もありませんでした。新しいものにチャレンジしたい人、横のつながり、斜め縦のつながりを持ちたい人に向いていると思います。

徳田:何かアクションを起こしたいと思っていてもなかなか起こせない職人さんがたくさんいます。新しい出会い、横のつながり、刺激を求めたいと感じる方、何かを吸収したいという意欲の高い方に来ていただけたら面白いと思います。

山口剛

Point of View

内装業界は地域性が強く、横のつながりを作りにくい業界です。徳田氏が語る「切磋琢磨」の環境は、経営者の視野を広げ、モチベーションを維持する上で極めて重要です。同業者との交流が「競争」ではなく「刺激」となり、お互いを高め合う関係性を築けることが、NPOの真の価値だと感じます。会員の継続参加という課題は、どの業界団体にも共通する悩みですが、その本質は「得られる価値」の明確化にあります。

現場を知る経営者を増やしたい

現場を知る経営者の視点──職人の苦境と業界構造の問題

山口: 職人さんに疑問を持たれたというお話について、もう少し詳しく教えてください。内装業界のイメージはどのように形成されてきたのでしょうか?

徳田: 材料を売っていた時は、仕上がりにあまり興味がなかったかもしれません。仕上げるのは職人さんだと、かなり乱暴に考えていました。数の論理で、材料を買ってくれる人が多ければ売上が上がるという考え方でした。

山口: それが変わったきっかけは?

徳田: 現場で釈然としない場面がありました。現場監督から追加工事を依頼されて「この現場は予算がないから次の現場に付加しておくから、何とかこの現場をタダでやってよ」という状況で、内装屋さんが強く言えずに潰れていく。最終的には職人さんにも材料屋さんにもお金を払えず倒産していくケースを何度も見てきました。

山口: 力関係の問題ですね。

徳田: 朝駆け、急な対応を求められながら精一杯やっても、お金が回収できない。「俺、何のために仕事してるんだろう」と感じました。「あの現場は全く儲からなかった、お金を足してあの現場を納めたようなものだ」とおっしゃる内装屋さんもいました。

徳田:力関係が大きく出すぎていて、儲からないというイメージ。他の業者が壁紙を傷つけても、そのお金を請求できず自腹で対応している内装屋さんがたくさんいらっしゃって、そういうことをしてはいけないと伝えていきたいという思いが強くなりました。

山口: そもそもシンコールに入られたきっかけを教えてください。

徳田: 父親の家業が家具屋だったんです。インテリアという漠然とした言葉に対して、就職活動をしていました。昭和62年当時、リクルートの雑誌を見てもインテリア・家具屋さんしか見なかったですね。

徳田:就職課で相談したところ、サンゲツなどのクロスメーカー、シンコール、内装屋さんなどを紹介されました。その中でシンコールという名前が大きそうだと思って面接を受けたら合格して、大学4年生で遊びたかったので、もうここでいいやと決めてしまいました。

山口: シンコールでのお仕事はどのようなものだったんですか?

徳田: 実はルート営業をしていないんです。リフォーム課があり、そこに先輩が一人いて教えてもらっていたのですが、その先輩がボーナスをもらった7月に「俺、今日で辞めるから。あとはよろしく」と言って辞めていったんです。

山口: それは大変でしたね。

徳田: 22、23歳の私が一人で現場をこなしていかなければなりませんでした。壁紙の張り替え、床の張り替えから始まり、キッチンの取り替え、全面改装など、すべて一人でこなしていかなければなりませんでした。よくしていただいていた工務店さんと一体となって、現場作業にずっと関わってきました。

山口: 家具屋の息子として、お父様からの教えや働くことへの価値観について教えてください。

徳田: 父は職人だったので、働けば働くほど収入があり、働かなければ収入はない。世の中で言われているボーナスというものも、なぜもらえるのかよくわかりませんでした。働かないとお金はもらえないもの、会社の業績が悪かったら給料は上がらないもの、という認識でした。

徳田:父は私が20歳、大学1年生の時に亡くなったんです。学費が払えなくなり、母は家で店をやって働いていましたが、私も学費を稼がなければなりませんでした。遺跡発掘調査のアルバイトで日当8千円をもらい、春と夏休みはずっと仕事をして、学費の半分にあたる30万円ほどを毎回袋に入れて母に渡していました。

山口: 働くことの意味を若いうちから体感されていたんですね。

徳田: また、家ではタバコ屋とクリーニングの取次ぎをやっていて、学校やアルバイトが終わると、5時から8時まで毎晩店番をしていました。母はその間に家に帰って夕飯を作る、という生活でした。まさに「働かざる者食うべからず」という環境で育ちました。

徳田:人に頭を下げることに抵抗はありません。商売をやっている家庭で育った子供は、当たり前のように頭を下げて、謝罪もできます。でもサラリーマンの家庭で育った子供は、親が頭を下げている姿を見たことがない場合が多い。新入社員が「お願いします」「ありがとうございます」と心から言えないことがあるのはそのためだと感じます。

山口剛

Point of View

徳田氏の経験は、内装業界の構造的問題を浮き彫りにしています。力関係による不当な要求、回収できない工事代金、自腹での補修対応──これらは今も続く業界の悪習です。一方、幼少期からの「働く」体験が、経営者としての土台を作っています。現場を知る経営者だからこそ見える職人の苦境。この視点を持つことが、業界改革の第一歩です。材料屋も、施工会社も、発注側も、公正な取引関係の構築が急務です。

非効率な業界からの脱却

経営改革の実践──赤字削減とコールセンター革命

山口: リフォーム担当から練馬シンコールの社長に至るまでの流れを教えてください。

徳田: 会社のオーナーの娘と27歳で結婚しました。リフォームのポジションから経理へ異動し1年半、その後ルート営業を3年ほどやりました。

徳田:当時の社長が退任されることになり、義父である会長から「やれるか」と聞かれました。当時の社長は厳しい方でしたが素晴らしい方で、ただ離職率も高い状況でした。これを解決したいと思い、32歳頃に引き受けました。

山口: 就任時の社員の反応はいかがでしたか?

徳田: 嬉しかったのは、私が就任することに対して、辞める人がほとんどいなかったことです。ポッと出の人間ではなく、一緒に10年近く働いてきたことを周りの方々が見ていてくださったんでしょう。みんな残って一生懸命やってくれました。

山口: 前任の社長から学んだ経営哲学を教えてください。

徳田: 義父の会長はすごく厳しい人で、社員の前で私は何十回も叱責されました。その中で、西川社長は「本質を見極めろ、何を言わんとしているかを聞き分けろ」とずっと言われていました。それが対お客さんに対しても、いろんな人に対しても、感情的に言ってくる人や冗談っぽく言ってくる人の本質は何なのかを見極めることを学びました。

山口: 具体的にはどのような訓練を?

徳田: 社長は毎日日報を出させました。「これ聞いてきたのか」「これやれたのか」「これはどう考えているんだ」と度々指摘されました。私は地頭でずる賢いので、言われないためにどうすればいいか、指摘される前にどうしようかと先手を打つようになりました。そうすると頭が回ってくるんです。前倒しでやることによって、とうとう社長から何も言われなくなりました。

山口: それから社長就任、最初に取り組んだことは何ですか?

徳田: 売れない時期にどんどん在庫が積み上がっていく状況でした。在庫が生きているのか死んでいるのかがすごく気になりました。

徳田:私がまず行ったのは、在庫を減らすことでした。そして全社員と年2回面談をしました。

山口: 面談ではどのような話を?

徳田: 就任直後に「これからよろしくお願いします。何をしたいですか、何か要望はありますか」と聞きました。営業マンの数を増やしてほしい、教育制度を設けてほしい、システムを良くしてほしい、給与を増やしてほしいなど、様々な要望がありました。

徳田:「わかりました。まず私が真っ先にやらなければならないことは給与を増やすことですね」と宣言し、給与を増やすこと、営業マンの数を増やすこと、配送を増やすことなどを段階的に進めていきました。

山口: コールセンター導入は大きな改革だったと伺っています。

徳田: 当時使っていたオフコンというコンピューターは、電算室の特定の人しか操作できませんでした。友人から「その方に何かあったときに大変なことになる」と指摘され、汎用型のパソコン化が必要だと感じていました。

徳田:縁があって、パッケージソフトの提案が銀行を通じてありました。さらに別の方からCTI(コンピューター・テレフォニー・インテグレーション)の提案があり、コールセンター化が可能だとわかりました。

山口: なぜコールセンター化が必要だったんですか?

徳田: 私たちの規模だと、営業所に内勤業務として2人は必要でした。しかし仲が良い悪い、できるできない、お子さんの都合などで、営業所長が外に出られず中にいる状況がありました。会議や商談の予定も、業務担当が9時から勤務なので10時や11時にしか行けない、5時には帰らなければならないので4時に出たいなど、効率が悪いと感じていました。

徳田:コールセンター化により、社員教育の充実と営業マンのフル活動が可能になりました。システム導入には数千万円かかりましたが、非常に効果がありました。

山口: 具体的にはどんな効果が?

徳田: 着信と同時に電話番号が登録され、誰がどの電話を取っているかがわかり、履歴も同時に確認できるので、同じロットで全て見ながら回答できました。また、入力システムも非常にシンプルにし、スタッフサービスから派遣された方でも半日で入力できるようにしました。FAXサーバーもあり、全て画面上で処理できました。

徳田:CTIシステムを組んだ理由は、業務の営業所における教育制度を充実させたいという思いでした。

山口剛

Point of View

徳田氏の経営改革は「人を活かす」という明確な哲学に基づいています。在庫の削減という財務改革、給与アップという従業員への還元、コールセンター化による業務効率化──すべてが「営業マンが営業に専念できる環境づくり」につながっています。数千万円の投資は勇気のいる決断ですが、半日で習得できるシンプルな設計思想が成功の鍵でした。内装業界でも、ITを活用した業務改革は十分可能なのです。

これからの内装業者に求められるもの

未来への提言──M&A、剥がし屋、そして勉強する経営者

山口: 現在の業界について、どのように見ておられますか?

徳田: 新築着工件数が落ちていて、爆発的に上がることは想像できません。職人さんがこれから増えていくことも考えづらい。シンコールを辞めたときから言っていますが、やはりM&Aしかないと思っています。業界的にM&Aをしながら、協力し合う体制が必要です。

山口: 人材確保についてはいかがですか?

徳田: 求人も難しくなると思います。時給が上がる中で、突然時給1500円を払うこともできないでしょう。そうするとアウトソーシングをせざるを得ず、社員の雇用もできない状況になっていきます。自分一人でやっていく分には面白おかしくやれますが、社員数を増やすのは困難です。

徳田:採用をきちんとされている会社は、夢を語ることができるんです。これからこうしなければならない、こうしたいという思いが強い。その思いは社員に支えてもらわなければならないから強いのです。人を増やしたい、人が増えると楽だという程度の考えでは、雇用はできないと思います。

山口: 発注側の動きについてはどう見ていますか?

徳田: 大手ハウスメーカーやゼネコンからすると、一人二人の内装屋さんには発注できません。それなりの規模のところにしか発注できない体系だと思います。問屋系の職人の体制が必要になってくるでしょう。

徳田:職人さんのレベルがバラバラ、見積書の書き方がバラバラ、項目がバラバラというのは、メーカーがきちんと指導してこなかった弊害だと思っています。業界を確立していくには、メーカーが職人さんの育成、教育の場を作りながらやっていくことが大事です。大手ハウスメーカーも内製化をどんどん進めているのではないでしょうか。

山口: 今後、どのようなことに取り組んでいきたいとお考えですか?

徳田: まず、中小企業診断士の試験に来年8月にチャレンジします。これを合格することで、業界に対するコンサルティングをしていきたいと考えています。業界に特化したM&Aのお手伝いが一つ。

徳田:もう一つは、助成金制度の活用支援です。本来、一人二人でやっている方に本当に必要な助成金ですが、申請に手間がかかるため、そのアウトソーシングの受け皿になりたいと思っています。

山口: 「剥がし屋さん」という構想も伺いましたが。

徳田: 腕のある職人さんが、誰でもできる剥がし作業に時間を使わなくてもいいのではないかと考えました。例えば、問屋やメーカーを退職した65歳以上の方や、週のうち数日働ける女性に剥がし作業を特化してもらう。

徳田:剥がし屋さんの中で、採寸もできる、コンセントプレートも外せる、駐車場の有無、電気の使用可否、近くのコンビニの有無、トイレ問題など、事前情報を依頼先にフィードバックする。そうすることで、貼ることに特化できる人は実力を発揮できるようになるのではないかと考えています。

山口: 分業体制ですね。

徳田: また、パテ屋さんという分業も考えられます。こうしたチームが組めれば、剥がしばかりではつまらなくなってクロスを貼りたくなる人も出てくるかもしれません。そんなことをこの10年で作り上げられたらと思っています。

山口: 課題は何でしょうか?

徳田: 私が一人ということですね。二人でいれば後押しされます。「これやりましょう、あれやりましょう」と言い合えますが、一人なので勉強に専念したいと思うと専念してしまう。

徳田:剥がし屋さんの組織を作るにしても、新しい事務所ができた段階で進めていこうと思っていますが、まず自分が覚えていかなければならない。軽トラ一台買って原付で回って、二尺の足場を持って、ドライバーとゴミ袋があればいけるだろうと考えていますが、一人でどこまでいけるか。それがうまくいって初めて採用できると思っています。

山口: M&Aについての可能性も、どのような会社同士の結びつきを考えておられますか?

徳田: M&Aで一番大事なのは、そこで働いている職人さんがどういう人たちなのかということだと思います。最低限の社会人としての規律がしっかりしている人たち同士を結びつけたい、紹介し合いたいと考えています。

徳田:町場ばかりしている50、60歳の方とハウスメーカーをやっている方では、養生も段取りも違ってきます。教育体制がしっかりされている人たち同士が良いと思います。借金の問題、人の問題などもあるでしょうが、若い職人さんがいることもやりやすさにつながると思います。

山口: 壁紙スクールは今後どうされますか?

徳田: 一段落してしまったということがあります。私が行った4日間の授業でやってきたことはきっかけづくりとしては良かったかもしれませんが、思いとしては次の段階に行ってしまいました。今やっている人たちが困っていることにシフトしたいと考えています。

山口: 若い方への研修についてはどのようにお考えですか?

徳田: 職人さんの施工技術は数年経てば覚えられます。でも基本的な挨拶、社長の思い、あるべき論というものは、親方からは伝えづらい。また、経理財務的なことも含めて伝えていかなければならないと思います。

徳田:会社の都合で「このお客さんつけてやるから出ていけ」と一人立ちさせられる職人さんをたくさん見てきました。将来的に外に出ていくタイミングがあるなら、経営、財務、法規といったことも学んでおくべきです。将来必ず役に立つはずです。

山口: 今もし、経営に困っている内装業者の社長がいるとしたらアドバイスをお願いします。

徳田: まず借金を減らすことに専念してください。そして事業を小さくしてください。技術を持っていれば、必ず一人で生きられます。サラリーマンはそれができませんが、技術を持っている人は、事務所も従業員も手放して一人になり、そこから立て直すことができます。

山口: 厳しいアドバイスですね。

徳田: 職人さんはそれができるんです。場所もいりません。極端な話、アパートと車一台、糊付け機があれば何とか生きていけます。材料の仕入れはせず、純粋に手間に徹する。回収もしてもらう。これが問屋付きの職人さんです。

徳田:採寸、打ち合わせ、見積もり、材料発注、現場確認など、金にならない仕事もたくさんあります。でも職人さんに徹して手間で受ければ、単価は低いかもしれませんがやっていけると思います。本当に厳しいと感じた方は、それに徹した方が良いと思います。

山口: 最後に、業界の皆さんへメッセージをお願いします。

徳田: 「勉強しましょう」ということです。経営者として、表面的に新聞を読んでテレビニュースを見て、この年まで来てしまいました。改めて勉強することによって、違う世界が見えてきていると強く感じています。

徳田:中小企業診断士を取得する方は、コンサルタントに行ってしまいますが、これを現役の経営者がチャレンジしたら、対外的な人との接し方、社内の組織の作り方など、変わると思います。

山口: 勉強とは具体的にはどこで学べばいいでしょうか?

徳田: 商工会議所や銀行など、相談できるところがたくさんあります。本当に困ることがあったら聞いてみて、自分の至らなさ、できていないところ、できているところを分析してもらい、活用できる助成金制度なども含めて、情報を得ることに専念してもらうと、事業がうまく進むのではないかと思います。

徳田:情報は高いレベルのものが良いです。同業の中での同年代、同じ年収の人たちではなく、少し違うランクの人たちが今どうして経営がうまくいっているのか、何をポイントにやっているのかという情報を得ようとしてほしい。学ぼうとして、何ができていないのかを知ってほしいと思います。

山口: 最後に、職人という仕事の可能性についてもお願いします。

徳田: 工業高校を回っていた時、「ここにいる子たちはほとんど大手企業の工場のラインに入る」と言われました。でも工場閉鎖の話もある中で、工場のラインで働いていた人が次の工場で何か役に立つかというと、あまりつかないのではないかと思いました。それなら職人さんの技術を身につける方が良いのではないかと。

徳田:壁紙スクールをやっていて、5社ほど転職してきた方が「究極、絶えず仕事として得ることができる仕事は職人さんだと、不動産経験者からすると壁紙の職人さんには必ず仕事がある」とおっしゃっていました。

徳田:サラリーマンに苦労して疲れ果てた方が次の選択肢として考えるのが職人さんなのかもしれません。ものづくりに目を向けて技術を身につけることで、派生して得られるものは業界に限らず多くあると思います。現場管理や監督など、幅広い展開ができるのが職人系、ものづくり系なのではないでしょうか。

山口剛

Point of View

徳田氏の未来構想は、業界の現実を直視した上での具体的な解決策です。M&Aによる規模の確保、剥がし屋という分業体制の構築、そして「勉強する経営者」の重要性──これらは内装業界だけでなく、多くの中小企業が抱える課題への処方箋です。特に「コアコンピタンスに徹する」という助言は、苦境にある経営者への厳しくも温かいメッセージです。職人の技術は一生の財産。その価値を再認識し、業界全体で若手を育て、正当に評価する仕組みづくりが急務です。

編集後記

徳田氏のインタビューを通じて見えてきたのは、「業界のため」という一貫した行動原理と、現場を知る経営者だからこそ持てる深い洞察でした。壁紙スクール、コールセンター化、そして今後の剥がし屋構想──すべてに共通するのは、「人を活かす」という哲学です。

内装業界は今、大きな転換点に立っています。新築減少、職人不足、価格競争、力関係の問題──課題は山積していますが、だからこそ、徳田氏のような先駆者の経験と知恵が求められています。

「勉強しましょう」という最後のメッセージは、すべての業界関係者への呼びかけです。同じ環境、同じ情報源にとどまらず、より高いレベルの知識と視点を求めること。それが、個々の企業の成長だけでなく、業界全体の底上げにつながります。

NPO法人住環境工事研究会は、そうした「学び合い、刺激し合う場」として、これからも業界の未来を担う人材を支援していきます。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。

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