
高級内装材「サンフット」で内装業の未来を拓く|北三が示す品質と職人の誇り
内装業界が直面する低単価、高齢化、人材不足という長年の課題。これらを乗り越え、持続可能な成長を実現するためには、私たち自身が新たな価値を見出し、事業構造を変革していく必要があります。この切実な思いを胸に、内装業界NPOの理事として、先日、私たちはある重要な視察と体験を行いました。 今回の視察で焦点を当てたのは、北三株式会社が手掛ける高級内装材**「サンフット」**です。創業101年を迎える老舗企業が、いかにして現代のニーズに応え、高品質な天然木材を提供し続けているのか。そして、この「サンフット」が、私たちの業界が抱える課題に対し、どのような解決策をもたらし得るのか――。本稿では、私、ミライズ山口の視点から、その視察の様子と、そこで得られた示唆について、深く掘り下げていきたいと思います。視察中の会話から見えてきた、内装業界の未来を拓くヒントが、ここにあります。

高級内装材サンフットと高品質な北三のこだわり
内装業界が抱える低単価、高齢化、人材不足といった課題に対し、高級商材の導入は単価アップとブランド価値向上を実現する有効な解決策となり得ます。その選択肢の一つとして注目されるのが、北三株式会社が手掛けるサンフットシートです。
北三は1924年創業、今年で101年を迎える老舗企業であり、その歴史は下駄の表面材に薄く削った木材を貼り合わせたことから始まりました。その後、大型スライサーの開発により、家具や内装材、楽器など多様な分野で使われる突板(つきいた)の製造を本格化。同社の小林氏は、「1960年代になりまして、ええ、そこからうちの会社の方で二次加工…不燃認定が取れているサンフットシート、それから不燃パネル、そういったものを作るようになり。内装材の方にも着手するようになり、今に至るようになりました」と語るように、時代のニーズに応じた製品開発を進めてきました。
サンフットシートの大きな特徴は、その品質への徹底したこだわりです。突板は「0.2mmから0.3mmの間」という極薄の木材をスライスして作られ、その製造工程では、厳選された丸太の選材から始まり、煮込み、裁断、乾燥といった熟練の技術と手間を要する工程を経て製品化されます。木本氏が「中国の突き板シートを触ったんですけど、めちゃくちゃ臭くて…なんかそういう粗悪品なものっていうのはイメージがあったんですけど」と指摘するように、海外製品の中には品質に課題があるものも存在する一方で、北三は「本物を使っております」と小林氏が断言するほど、天然木の素材そのものの良さを追求しています。
また、サンフットシートは「不燃の認定をとっているのがウレタン塗装で、一応とっておりますね」と小林氏が述べるように、機能性にも優れています。天然木ならではの風合いと、長年の経験に裏打ちされた高い品質は、まさに高級商材としての価値を確立しています。日本国内で突板の製造から二次加工までを一貫して行う企業は北三のみであり、この一貫生産体制が高品質を支える大きな要因となっています。

Point of View
品質へのこだわりが、最終的に職人の誇りを守ることに繋がります。大量生産ではなく、丁寧なモノづくりが評価される時代にこそ、私たちが価値を見出し直すべきだと感じました。

市場が求める自然素材と設計士のこだわり
現代の建築・内装市場では、自然素材への回帰が顕著です。特に、その中でも設計士から絶大な支持を集めているのが、ホワイトオークやウォールナットといった木材の素材感です。北三の小林氏も、「基本的にオーク、ウォールナット材。その二大種がメインで生産作ります」と述べており、これらの木材が市場の主流を占めていることがわかります。
海外からの買い付けが中心となる一方で、日本の木材については、小林氏が「どうしても枝の少ない台で、太い台からこう皆さん伐採していって、そちらから使っていったものなので、基本的に今ないっていうのは枝が多くて、まあ多分径が細い台が多いです」と説明するように、良質な広葉樹の減少という課題を抱えています。しかし、その中でもタモやセン、ヒノキ、ケヤキといった日本材も、その特性を理解した上で活用されています。

Point of View
自然素材は「流行」ではなく「原点回帰」だと改めて実感しました。素材を活かす美意識と、設計士・職人の協働によって、日本の内装文化はさらに深まると信じています。

自然素材への回帰:設計士が選ぶオークとウォールナット、そして施工の妙技
サンフットのような高級商材は、その品質の高さゆえに、施工には特別な技術と配慮が求められます。相互建装の木本氏は、サンフットシートの施工について「まず臭気作業をやるってことですよね。うん、臭気作業、匂い、匂いですね。そこはまず注意していただきたい」と、独特の匂いへの配慮を挙げます。また、「三次元の施工はちょっと厳しいですね」と、複雑な形状への対応の難しさも指摘しています。
天然木であるため、木材の種類によって硬さや割れやすさが異なり、「結局ね、木の種類によって割れてくるよねとか、これ硬いからこのデズレきついよねとか」と木本氏が語るように、個々の木材の特性を見極める必要があります。さらに、木目の連続性をどのように表現するかという「柄の出し方」も重要な要素です。「どの順序に貼ってったほうが見切り倍がいいかとか」といった、美観を追求するための細かな調整が求められるのです。
小林氏と木本氏の会話からも、天然木の扱いには職人の経験とセンスが不可欠であることがわかります。木目をいかに美しく見せるか、あるいは節といった天然木ならではの特性をデザインとして活かすかなど、施工現場での判断が最終的な仕上がりに大きく影響します。特に「ブックマッチ」や「ランダムマッチ」といった貼り方は、その空間の印象を決定づける重要な選択となります。
高級内装材の導入は、単なる材料費のアップではなく、それを扱う職人の技術力やデザイン提案力といった付加価値を最大化する機会と言えるでしょう。

Point of View
天然木は一本ごとに個性があり、その違いを見極めるのが職人の技。手間を惜しまぬ仕事が、空間に“生きた素材感”を宿すのだと、改めて現場で痛感しました。

逆境を乗り越える:サンフットが拓く内装業界の未来
低単価競争、職人の高齢化、そして深刻な人材不足。これらは内装業界が直面する喫緊の課題です。しかし、こうした逆境を乗り越え、持続可能なビジネスへと転換する道筋として、高級商材「サンフット」の導入が新たな可能性を提示します。サンフットは単なる高価な材料ではありません。それは、貴社の事業を再構築し、未来へ投資するための重要な一手となり得ます。
サンフットがもたらす高単価と高付加価値
従来の低単価競争から抜け出すためには、他社との差別化が不可欠です。サンフットのような高級商材を扱うことは、貴社のブランド価値を向上させ、高所得層の顧客獲得に繋がります。これにより、単価アップと利益率の改善が期待できます。
北三の小林氏は、同社の突き板製品が豪華寝台列車の内装に採用された事例に触れ、「元々はそこがスタートだったんですね。そうしたら段々、じゃあ、うちもやりたいっていう風に手を上げる企業が増えて」と語っています。これは、サンフットが単なる建材ではなく、プロジェクト全体の価値を高める商材として認められている証拠です。高級プロジェクトへの参画は、貴社の実績と信頼性を高め、さらなる高単価案件へと繋がる好循環を生み出します。
北三の一貫生産体制が支える品質と信頼性
高級商材の取り扱いには、品質への確固たる信頼が不可欠です。北三は、日本国内で唯一、突き板の製造から二次加工までを一貫して行う体制を確立しています。小林氏が「両方やってる会社っていうのは日本で弊社だけです」と胸を張るこの体制こそが、サンフットの安定した高品質を保証する根拠となっています。
また、インタビューでは、過去に他社の中国製シートで「めちゃくちゃ臭くて」といった問題があったことが語られており、品質の重要性が改めて浮き彫りになりました。北三は、自社の製品について「本物を使っております」と明言し、ウレタンクリア塗装による不燃認定の取得など、機能性においても高い基準をクリアしています。
施工上の疑問や課題に対しても、北三はサポートを提供します。小林氏は、設計士からの「この木だったらどれぐらい集まるの?とか」といった質問に対し、供給量や色合い、柄の指定など、きめ細やかな提案をしていることを示しています。こうしたメーカーの手厚いサポートは、高級商材を初めて扱う業者にとって大きな安心材料となるでしょう。
未来への投資としての高級商材導入
内装業界の高齢化と人材不足は深刻ですが、高級商材の導入は、この問題に対する一つの解決策となり得ます。高単価の仕事は、職人一人ひとりの生産性を高め、より高い報酬を可能にします。これは、若手の人材確保や、熟練の職人が持つ技術の継承を促すインセンティブとなるでしょう。
サンフットのような天然木を扱うことは、職人にとっての「面白さ」にも繋がります。木本氏が「僕らはサンフットってやる方が面白いですね。やっぱり天然物触ってる方が僕は面白いです」と語るように、一つとして同じものがない天然木の特性と向き合うことは、職人の技術と感性を刺激し、仕事へのモチベーションを高めます。
単価アップに成功すれば、企業は従業員の育成や労働環境の改善により多くの投資が可能となり、結果として持続可能なビジネスモデルを構築できます。サンフットの導入は、単に高価な材料を使うということ以上の、貴社の未来を切り拓く戦略的な一歩となるはずです。

Point of View
課題は多いが、悲観する必要はありません。高品質商材を扱う挑戦は、職人の技術を再評価し、業界の地位を押し上げる絶好の機会だと考えています。若手が「この仕事を続けたい」と思える環境を整えるには、誇りを持てる商材と現場が必要です。高級内装材の導入は、次世代への橋渡しだと確信しています。
編集後記
今回の北三さん視察は、まさに「本物」との対話でした。「中国の突き板シートを触ったんですけど、めちゃくちゃ臭くて…なんかそういう粗悪品なものっていうのはイメージがあったんですけど」とあったように、品質への先入観を良い意味で裏切られた方も多いのではないでしょうか。 低単価の波に揉まれる私たち内装業界にとって、北三さんのサンフットは、ただの高価格帯商材ではありません。それは、職人の技が光る「面白い」仕事を生み出し、ひいては業界全体の価値を底上げする可能性を秘めていると感じました。この出会いが、皆さんの新たな挑戦のきっかけとなれば幸いです。
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Author:山口剛
プロフィール
## 活動概要
山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。
「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。
## 経歴
1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。
## 個人について
家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。



