
『サンフット突板シート施工の革新〜現場貼りの限界を超える新時代の内装工法』
内装業界の革新を追うけの蒸し暑い午後だった。サンフットという特殊な突板シートの施工現場を取材するためである。この素材が内装業界にもたらす変化を、私は数年来追い続けてきた。現場での限界を超え、倉庫での施工にシフトする動きは、単なる技術的な転換を超えて、業界全体の構造変化を予感させるものだった。

現場から倉庫へ - パラダイムシフトの始まり
~ 現場貼りの限界と新たな可能性 ~
相互建装の木本氏との対話は、業界の現実を如実に映し出していた。突板貼りという繊細な作業が、なぜ現場では困難なのか。その根本的な問題は、単純に技術的な難しさだけではなかった。
「突板って、現場で貼ろうとしても、実際のスペースが確保できなかったり、他業種と被ったりして作業できないことが多い」と木本氏は語る。現場の混雑、工程の重複、そして突板という素材の特性が重なり合って、従来の現場施工では限界があることが明らかになってきた。
私が取材を重ねる中で見えてきたのは、この問題が業界全体の構造的な課題であるということだった。ゼネコンから下請けまで、誰もが「貼れる人がいない」「現場で貼る場所がない」という同じ悩みを抱えている。
木本氏の会社が提供する倉庫施工サービスは、そうした現場の切実なニーズから生まれた解決策だった。「現場で『貼れませんねぇ』って話になったとき、スマホでパッと見せて『うちの倉庫でこういうふうにやってますよ』って案内できますから」という木本氏の言葉に、新しい時代の到来を感じた。
現状では確かに現場貼りがメインストリームだが、私は今後5年から10年の間に、貼ってから納品する方式が主流になると予測している。それは単なる技術的な進歩ではなく、業界全体の働き方改革につながる大きな変化になるはずだ。
Point of View
「倉庫での施工が標準化されれば、内装業界は確実に変わる。現場の制約から解放された職人たちが、本来の技術力を発揮できる環境が整うのだ。これは業界にとって大きな転換点になるだろう。」

人材育成と世代継承の新しいかたち
~若手育成の戦略化と高齢化対策~
私が最も注目しているのは、このシフトが人材育成に与える影響である。現場での突板貼りは、環境の不確定要素が多すぎて、若手の見習い期間が長期化する傾向にあった。しかし、倉庫という管理された環境では、その問題が劇的に改善される可能性がある。
「倉庫なら温度も湿度も管理しやすいし、何よりスペースが取れる。あと作業する職人さんが突板に慣れているかどうかも重要」と木本氏が説明するように、安定した環境での継続的な作業は、技術習得のスピードを格段に向上させる。
見習い期間の最小化は、若年層の戦力化を早める。従来なら3年かかっていた技術習得が、1年半程度に短縮される可能性もある。これは業界の人手不足解消に直結する変化だ。
同時に、高齢化が進む職人層にとっても朗報である。現場での重労働から解放され、技術と経験を活かせる環境が提供される。「同じ職人が一貫して作業できる。慣れてる人がやるっていうのは、やっぱり大きいですよ」という木本氏の指摘は、ベテラン職人の価値を再認識させるものだった。
体力が衰えても、技術力は衰えない。倉庫施工は、そうしたシニア層の職人たちに新たな活躍の場を提供する。これは単なる雇用延長ではなく、貴重な技術の継承を促進する仕組みでもある。
Point of View
「技術は継承されるべきものだ。現場の制約に縛られず、純粋に技術力で勝負できる環境こそが、真の職人を育て、そして活かすことができる。この変化は、業界の人材育成を根本から変えるだろう。」

自然回帰と業界の未来展望
~工期短縮と品質向上の両立~
倉庫施工のもう一つの大きなメリットは、工期の大幅な短縮である。現場での調整時間、待機時間、やり直しのリスクが大幅に削減されることで、全体のスケジュール管理が格段に向上する。
「貼った後に寝かせる時間って必要なんですけど、現場ではそれが取れない」と木本氏が語るように、突板という素材の特性を活かすためには、十分な時間管理が必要だった。倉庫施工では、そうした工程を適切に管理できるため、結果的に工期短縮と品質向上が同時に実現される。
私がこの取材を通じて強く感じたのは、サンフットのような自然素材への回帰が、内装業界の本質的な価値を再確認させているということだった。「天然木の風合いは、どんな印刷技術でも再現できない」という木本氏の言葉は、デジタル化が進む時代だからこそ響く真実である。
相互建装のような企業の躍進は、単なる一企業の成功を超えて、業界全体の方向性を示している。技術革新と伝統技法の融合、効率化と品質向上の両立、そして何より、職人という存在の価値を再定義する動きの象徴なのである。
Point of View
「内装業界は今、大きな転換点に立っている。サンフットという素材が示すのは、自然素材への回帰と技術革新の融合だ。相互建装の挑戦は、この業界の未来を明るく照らしている。私たちは確実に新しい時代の扉を開こうとしているのだ。」
編集後記
如何でしょうか? 現場という制約に挑み、倉庫という新たなフィールドへと舞台を移すサンフットの施工革命。その背後には、ただの技術革新では語りきれない、職人たちの働き方、生き方にまで影響を与える深い変化がありました。 自然素材への敬意と、人の技術が交差するこのシフトは、若手育成の効率化やベテラン職人の活躍の場の再創出など、内装業界の構造を根底から揺さぶるものです。 そして今、私たちはその変化の最前線に立ち会っています。サンフットが示す未来は、単なる施工技術の転換ではなく、「人と技術と素材」が織りなす新しい時代の幕開けなのかもしれません。

Author:山口剛
プロフィール
## 活動概要
山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。
「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。
## 経歴
1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。
## 個人について
家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。