【ニュース解説】 住宅確保要配慮者支援モデル事業、令和8年度募集開始

住宅のセーフティネットについて解説

住宅確保要配慮者の居住安定へ モデル事業募集開始

国交省が令和8年度「みんなが安心して住まいを提供できる環境整備モデル事業」の募集を開始した。住宅確保要配慮者の居住支援に取り組む居住支援法人等を対象に、多主体連携型とサブリース型の2区分で支援する。 

 

元の記事

住宅確保要配慮者の居住の安定を図るモデル的な取組を支援します!

~令和8年度「みんなが安心して住まいを提供できる環境整備モデル事業」の募集を開始~

 

事実:国土交通省が令和8年6月15日、住宅確保要配慮者の居住安定を図るモデル事業《多主体連携型》《サブリース型》の募集を開始し、応募期間は6月15日~7月13日17時とした。

構造:安否確認・見守り・福祉サービスへのつなぎ機能を備えた住宅提供を通じ、所有者側の不安を軽減する仕組みを制度的に用意することで、要配慮者の入居受け入れを促進する構造になっている。

影響:居住支援法人等にとっては補助を受けたモデル的取組の実施機会となる一方、《サブリース型》は居住サポート住宅認定が前提かつ予算上限に達し次第受付終了となるため、対応のスピードが問われる。

変化:今後、居住サポート住宅の認定拡大とサブリース型スキームの活用が進めば、低額所得者・高齢者・障害者・子育て世帯等の民間賃貸住宅への入居機会が段階的に広がっていくと見込まれる。

当NPOの理事がこのニュースを分かりやすく解説

住宅弱者への居住支援制度が建築業界にもたらす構造変化

本件により業界は何が変わるのか

国土交通省が推進する住宅確保要配慮者向けの居住支援モデル事業は、建築業界の事業機会を根本的に再定義するものです。1高齢者、障害者、低所得者、被災者、子育て世代といった従来は市場化しにくかった層への供給が、政策的なインセンティブによって事業化される局面です。

従来、施工業界は新築・リノベーション受注を利潤源としてきましたが、本施策により「既存空き家の利活用と居住支援を一体で進める」という新たな事業モデルが成立します。1単なる物件修繕ではなく、バリアフリー対応や安全性確保といった「居住適格化工事」が体系的に発注される構造です。実務的には、行政・福祉機関・不動産事業者・施工業者が連携する多層的なサプライチェーンが形成され、中堅・小規模事業者にも参画の道が開かれます。

この動きの本質はどこにあるのか

本質は、市場の失敗に対する政策的介入です。1空き家は増加している一方で、保証人問題、家主の入居者選別、物件側の修繕不足といった多角的な障壁により、供給と需要がミスマッチしている状況です。建築業界の視点では、これは「既存ストックの利用効率化を通じた稼働率向上」の事業機会であると同時に、「福祉・行政機能との統合」を余儀なくされる転換点を意味します。

2NPO視点での指摘の通り、民間企業が純粋な利益追求のみでは対応できない領域です。むしろ行政・民間・NPOが機能分担する「三角関係」の中で、施工業者は「社会実装の担い手」としてのポジショニングを求められる構造になっています。

建築業界は今後どこに向かうのか

今後、建築業界は二つの方向性を並行させることになるでしょう。

第一に、既存住宅市場におけるサービス統合化です。1「空き家活用と居住支援を一体に進める」という方針により、物件診断から修繕、行政への報告、入居者支援までを包括する事業フロー化が進みます。これは従来の発注元と施工者の単純な取引関係を超え、地域インフラ事業としての性格を帯びるようになります。

第二に、2施工業者と福祉・雇用支援の連携が制度化される点です。B型支援事業との組み合わせに象徴されるように、建物保全そのものが雇用創出・社会参画の場となる可能性が高まります。

ただし、民業圧迫のリスクは無視できません。供給量が適正化されることで、確保賃貸化や建築修繕費の標準化が進む場合、既存事業者の価格設定余地が縮小する懸念があります。業界として持続性を持つには、量的拡大だけでなく、「地域インフラとしての機能」を説得的に提示できるかが問われています。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。




【ニュース解説】空き家問題、税や罰則の改正で市場はどう動く

改正空き家法の本番期のイメージ画像

改正空き家法の本番期——税・罰則の強化が建築市場と所有者行動を変える

記事紹介

改正空き家法に基づく行政指導・勧告が全国で進み、管理不全空き家への早期対応と民間活用の枠組みが本格稼働しつつある。

元の記事

令和5年改正空家法に基づく取組が広がる

 

概要

事実

改正空き家法により2025年3月末時点で指導3,211件・勧告378件が実施、95法人が支援法人として指定された

構造

「危険化後に除却」から「管理不全段階での早期是正」へと空き家対策のステージが前倒しにシフトした

影響

勧告を受けると固定資産税の住宅特例が外れるリスクが生じ、所有者・工事会社・NPO等が早期関与を求められる

変化

行政だけでは対応限界があるため、民間プレイヤーを組み込んだ予防・活用・管理の複合的枠組みが制度化されていく

当NPOの理事がこのニュースを分かりやすく解説

改正空き家法の施行から約1年半。行政指導3,211件、勧告378件、支援法人95法人の指定——数字が示すとおり、空き家対策はいよいよ「制度の本番期」に入った。本稿では、建築・工事業界の実務的立場から、この政策転換が現場にもたらす構造変化を読み解く。

1. 「事後対応」から「予防介入」へ——対策ステージの前倒しが意味すること

除却から管理不全是正へのパラダイムシフト

従来の空き家対策は、建物が危険な状態になってから行政が動くという「事後対応型」が基本だった。改正空き家法はこの構造を根本から変えた。管理不全の段階で市町村が指導・勧告を行えるようになったことで、行政の介入タイミングが大幅に前倒しされている。

建築の現場から見れば、これは非常に合理的な変化だ。建物は放置されるほど劣化が加速し、修繕・活用にかかるコストが指数関数的に増大する。早期に手を入れることで、除却ではなく「使える状態への再生」という選択肢が現実的になる。

勧告が持つ経済的インパクト

見落とせないのが、勧告を受けた場合に固定資産税の住宅用地特例が外れる可能性がある点だ。これは所有者にとって実質的な税負担増を意味し、「放置コスト」を可視化する仕組みとして機能する。相続等で空き家を取得しながら判断を先送りにしていた所有者に対して、制度が明確な経済的プレッシャーをかける構造になった。

2. 民間プレイヤーの組み込みと、工事業界に求められる役割の変容

行政単独では解決できない—— 官民連携 の必然性

64市町村・95法人という支援法人の指定数が示すとおり、国土交通省は行政だけでは空き家問題に対応しきれないという現実を直視している。相談窓口の運営、活用希望者とのマッチング、地域ごとの実態把握——これらを担う民間・NPO・地域団体の存在なくして、制度は機能しない。

われわれNPOのような団体が担うべき役割は、所有者と地域社会、そして工事・不動産の各プレイヤーをつなぐコーディネート機能にある。

「仕様通りの施工」から「価値創出の施工」へ

工事業界にとってより本質的な変化は、求められる姿勢そのものの転換だ。これまでは設計者や発注者から仕様が下りてきて、職人・工事会社はそれを忠実に実行することが主な役割だった。

しかし空き家の再生においては事情が異なる。「この建物を直す価値があるか」「どこまで手を入れれば市場で選ばれる住まいになるか」「費用対効果の最適解はどこか」——こうした問いに工事側が主体的に答えられなければ、プロジェクト自体が前に進まない。内装・設備・外装・断熱・耐震・残置物処理、そしてデザインまでを俯瞰した提案力が、これからの工事会社の競争軸になる。

3. 建築・工事業界が今すぐ準備すべきこと

「負動産」を「再生資産」に変える技術と目線

相続等で取得された不動産が「負動産」として放置される背景には、経済合理性の問題だけでなく、地域の世間体や感情的な障壁も存在する。建築・工事のプロとしては、こうした文脈を理解したうえで所有者に関与する姿勢が求められる。

技術的には、最小限の投資で最大限の居住性・資産性を回復するという視点が重要になる。過剰スペックの改修は所有者の判断を遅らせる。スコープを絞り、段階的な再生ロードマップを提示できる実務力が差別化につながる。

早期関与の習慣化と地域ネットワークの構築

改正法が求めているのは、結局のところ「早めのジャッジ」を社会全体で実現する仕組みだ。工事会社・設計者・NPO・行政・不動産会社が、危険化する前の段階から情報を共有し、連携して動ける体制を地域ごとに構築することが急務となっている。

「壊れ窓の法則」が示すように、管理されない建物が一軒あるだけで地域全体の環境・資産価値・安全性が損なわれていく。建築の専門家として、その連鎖を最上流で断ち切ることに、われわれが貢献できる意義がある。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。




【ニュース解説】国交省・空き家対策モデル事業2026|建築業界が知るべき構造変化

空き家問題 2026年時点での理事の見解

空き家対策は「除却」から「活用」へ——建築業界に迫られる事業モデルの再設計

国交省が令和8年度の 空き家対策モデル事業 の募集を開始。民間・NPO・自治体が対象で、相談体制の整備からAI活用、ビジネスモデル構築まで幅広いテーマで支援します。

元記事:

令和8年度 空き家対策モデル事業の募集を開始
~先進的な空き家対策の取組を支援します!~

概要

視点 内容
何が起きたか(事実) 国交省が令和8年度「空き家対策モデル事業」の提案募集を開始(締切:5月20日)
本質(構造) 空き家対策の軸が「解体・除却」から「活用・相談・地域再編」へシフトし、官民NPO連携モデルの制度化が進んでいる
現場への影響(影響) 工事会社・職人も「初期相談・活用計画」段階から関与できる機会が広がり、施工前のフェーズでの役割が求められてきている
今後どうなるか(変化) 相続空き家の急増を見据え、予防的・多主体連携型の空き家マネジメントが全国標準になっていく

当NPOの理事がこのニュースを分かりやすく解説

本件により業界は何が変わるのか

「工事の前」が、事業になる時代へ

国土交通省が令和8年度の空き家対策モデル事業の募集を開始した。対象はソフト事業・ハード事業の両輪で、民間事業者やNPO、地方公共団体まで幅広く門戸が開かれている。

注目すべきは、これまで「解体・改修」に偏っていた支援スキームが、相談体制の整備や事業スキームの構築、調査・普及啓発といったソフト領域まで拡張された点だ。建築業界にとっての実務的な変化はここにある。工事受注の前段階、すなわち「診断・相談・活用提案」のフェーズが、制度的に評価・支援される対象になりつつある。


この動きの本質はどこにあるのか

空き家問題は「除却の問題」から「流通の問題」へ移行している

従来、空き家対策は老朽建築物の危険除去という文脈で語られることが多かった。しかし今回の募集テーマを見ると、新たなビジネスモデルの構築、ライフスタイルに対応した活用、AIやデジタル技術の活用、既成住宅地の再編まで踏み込んでいる。これは国が「空き家を 社会資源 として再定義する」フェーズに入ったことを示唆している。

建築業界の構造的な課題として、現場の技術・ノウハウが「工事段階」にしか価値化されていない点がある。劣化状況の見立て、改修の可否判断、コスト概算——こうした知見は現場経験の蓄積そのものだが、これまでビジネスとして成立しにくかった。今回の制度は、そこに事業性を付与する可能性を持っている。


建築業界は今後どこに向かうのか

「施工会社」から「空き家活用のパートナー」へ

相続空き家の急増は、今後10〜20年にわたって不可逆的に進む。所有者側の課題は、お金・感情・情報の三つに集約されるが、特に「何からすればいいか分からない」という情報ギャップが活用を阻んでいる現実がある。

この文脈において、現場を知る工事会社・専門業者の役割は本来、きわめて大きい。建物の状態を的確に評価し、活用シナリオに応じた改修の方向性を示せるのは、不動産業者でも行政でもなく、現場経験者だからだ。

ただし、そこに向かうには事業モデルの再設計が必要になる。初期相談や現地調査を無償で行う慣習を見直し、知見そのものに対価を設定する仕組みをどう構築するか。官民連携・多主体連携という今回のキーワードは、そのための制度的な足場になり得る。

空き家問題は地域課題である以上に、建築業界にとって次の主戦場になりつつある。その参入タイミングとして、今回の公募は一つの起点として見ておく価値があるだろう。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。




【ニュース解説】大工は2035年に15万人へ――国交省とりまとめが示す担い手危機と、業界が問い直すべき「本質的な一手」

建設業の労働人口減少を考察

担い手不足に複合施策で応じる限界――「選ばれる業界」への転換に必要な視点とは

国土交通省が住宅建設技能者の確保に向けた懇談会とりまとめを公表。大工就業者は2035年に15万人まで減少する見通しの中、社員大工化や地域工務店の経営強化など4つの視点で方向性を示した。

元の記事:

住宅建設技能者の持続的確保に向けた中長期ビジョン策定検討委員会 配布資料

「住宅分野における建設技能者の持続的確保懇談会」のとりまとめを公表!

概要

   

何が起きたか(事実)

国交省が住宅建設技能者の持続的確保に向けた懇談会とりまとめを公表し、2035年に大工が15万人まで減少するという見通しを示した

本質(構造)

職人の個人依存・ 一人親方 モデルが限界を迎えており、雇用・育成・経営の構造ごと変えなければ担い手は確保できないという認識が官民で共有された

現場への影響(影響)

社員大工化・CCUSによるキャリア可視化・女性や外国人材の受け入れ整備など、現場の雇用慣行と職場環境の見直しが求められる

今後どうなるか(変化)

官民連携 の中長期ビジョン策定へ移行し、地域工務店の M&A ・アライアンス・DX導入など経営モデルの転換が政策的に後押しされる

当NPOの理事がこのニュースを分かりやすく解説

■ 本件により業界は何が変わるのか

国が「構造問題」として認定した意義は大きい

2035年に大工就業者が15万人まで減少するという推計は、業界関係者にとって驚きではない。しかし国交省がこれを正式にとりまとめとして公表し、「社員大工化の推進」「地域工務店の経営基盤強化」を方向性として明示したことには、一定の意義がある。

これまで担い手不足は現場の問題として処理されてきたが、今回の懇談会は雇用・育成・経営という三層にわたる構造問題として整理した。社員大工化やCCUSによるキャリア可視化、M&A・アライアンスの促進といった方向性は、個社の努力では解決できない課題を政策として扱い始めたサインとして読むべきだろう。

■ この動きの本質はどこにあるのか

施策の多さが、スイッチボタンの不在を示している

とりまとめを読んで率直に感じるのは、課題認識の精度に比べ、打ち手の解像度が低いという点だ。DX推進、女性活躍、外国人材受け入れ、魅力発信——いずれも否定できないが、これだけの施策を並列すると、どれが構造を変える「一手」なのかが見えなくなる。

1990年代のニューヨーク市が犯罪多発の状況を打開した際、有効だったのは複合施策の総量ではなく、構造的なボトルネックを特定し、そこにシンプルに介入したことだった。住宅建設業界にも、同様の問いが必要ではないか。「何をやれば変わるか」ではなく、「何が変われば他が連鎖するか」という問いの立て方だ。

業界が長年抱える本質的な課題は、職業としての憧れの欠如と、努力が報酬に直結しない構造にある。ノルウェーが漁業の担い手不足を解消した際、政府は大型船化と処遇の抜本改善によって「かっこいい職業」に転換することに集中した。PRサイトの構築ではなく、職業の魅力そのものを変えたのだ。今回のとりまとめがその視点に踏み込めているかどうかは、慎重に見極める必要がある。

■ 建築業界は今後どこに向かうのか

官の方針を「刺激」として、民が問いを立て直す局面

国が中長期ビジョンの策定に向けて動き出したこと自体は、業界にとってフォローウィンドになり得る。ただし、政策の実装力には構造的な限界がある。現場の雇用慣行や取引慣行を変えるには、実務を担う事業者・団体が主体的に動く必要がある。

地域工務店の事業承継やアライアンス促進、パネル化・AIの導入といった方向性は、経営の視点から見れば十分に合理的だ。問題は、それを誰がどう実装するかの絵が描かれていない点にある。

建築業界は今、高度経済成長期に固定化された業務構造と雇用モデルの賞味期限が切れる局面を迎えている。国の方針を待つのではなく、業界内の実務者・NPO・教育機関が連携して「本質的なスイッチ」を特定し、提言として形にしていくことが求められている段階だと考える。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。