【ニュース解説】サンゲツ、リリカラなど大手決算から 住宅業界の今後を読み解く

決算情報から市況を予測

主要4社の決算が示す、内装業界のコスト構造の限界と次の一手

記事紹介

サンゲツ・トーソー・ロンシール工業・リリカラの2026年3月期決算が出そろった。各社とも売上は増加したが、リリカラは経常・純利益が減少。原材料費や為替リスクを背景に、今後の利益確保には不透明感が漂う。 

 

元の記事

トーソー 「2026年3月期連結決算」

ロンシール工業 「2026年3月期連結決算」

リリカラ 「2026年12月期決算」

サンゲツ 「2026年3月期連結決算」

 

概要(4つの視点)

  • 何が起きたか(事実) 内装インテリア主要4社の決算が発表され、各社とも売上高は増加したが、リリカラは経常・純利益が減少した。
  • 本質(構造) 販売価格改定や需要維持により売上は伸びているものの、原材料費・物流コスト・為替変動の影響が利益を圧迫する構造が顕在化しつつある。
  • 現場への影響(影響) 材料価格の変動により長期見積もりの維持が困難になっており、工事店には見積有効期限の設定や材工分離請求など、コスト管理の精緻化が求められている。
  • 今後どうなるか(変化) 7月の価格改定や為替・物流コストの上昇が時間差で波及する見込みで、適正価格の設定と透明性ある請求対応が業界全体の持続可能性を左右する局面に入る。

当NPOの理事がこのニュースを分かりやすく解説

住宅業界の決算から市況を予測する

■ 本件により業界は何が変わるのか

「増収」が当たり前でなくなる時代へ

サンゲツ・トーソー・ロンシール工業・リリカラの2026年3月期決算が出そろった。売上高はいずれも前年比増と、表面上は堅調に見える。しかし注目すべきは、リリカラの経常利益が前年比32.8%減という数字だ。売上が伸びても利益が残らない構造が、一部で現実のものになりつつある。

各社が今期の見通しとして「増収を見込む一方、利益はやや慎重」と揃って示したことは、業界全体への警告として読み取るべきだろう。増収イコール健全経営という方程式は、すでに成立しにくくなっている。

■ この動きの本質はどこにあるのか

コスト構造の「見えない歪み」が表面化している

内装インテリア業界のサプライチェーンは、メーカーが製造し、流通が卸し、工事店が施工するという多層構造だ。各社の決算が示しているのは、このチェーンの中で原材料費・物流コスト・為替変動というリスクが、どこかに押し付けられながら吸収されてきた実態である。

特に建材は、製造から実際の施工まで1年以上かかるケースも珍しくない。発注時と施工時で為替や原材料費が大きく変動すれば、企業努力だけでは吸収しきれない損失が生まれる。今回のリリカラの利益減少は、その構造的な限界が数字に出た一例と見ることができる。

また、工事店レベルでは「材工一式いくら」という見積慣行が根強く残っており、材料費と施工費が分離されないまま価格変動リスクが曖昧に処理されてきた。この慣行が、業界全体のコスト可視化を阻んできた一因でもある。

■ 建築業界は今後どこに向かうのか

適正価格と説明責任が、事業継続の条件になる

7月には複数メーカーで価格改定が予定されており、為替・輸送コスト・保険料の動向次第では、さらなる波が来る可能性がある。現時点の各社業績は堅調だが、これは「過去の受注」を反映したものに過ぎず、足元の仕込みコストが利益に反映されるのはこれからだ。

工事店が今すぐ取り組むべきことは明確で、見積の有効期限を設定すること、そして材料費・施工費・運送費・管理費を分離して提示することだ。これは単なる価格転嫁の話ではなく、何にいくらかかるのかを社会に説明できる体制を整えることでもある。

業界の持続可能性は、誰かが無理にコストを飲み込み続ける構造から脱却できるかどうかにかかっている。適正価格の実現は、現場の職人を守ることであり、業界全体の信頼性を高めることでもある。その第一歩として、今回の各社決算を「他社の話」として流すのではなく、自社のコスト管理と請求設計を見直す契機にしてほしい。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。




理事会 開催報告 内装業界の現状分析 2025年11月

内装業界の現状分析2025年11月理事会

内装業界の現状分析2025年11月

当NPO法人の2025年11月度理事会が開催され、内装業界の現状分析と将来展望について活発な意見交換が行われました。主に内装材料卸業の今後の方向性について議論されました。

主な議題

  • 若手社員(20代〜30代)の育成状況と、次世代リーダーシップ開発の取り組み
  • 内装業界における問屋機能の将来的な変化と対応策について
  • 職人不足時代における事業モデルの再構築について
  • 若手職人育成の現状と課題について

今後の方針・アクション

  • 「戦略」「スタイル」「仕組み」の3要素を見直し、組織変革を進める
  • 20代〜30代の若手社員に対し、マネジメント経験の機会を意図的に創出する
  • 新たな価値提供モデルへの転換を検討する
  • 消費者直接対応型のサービス(アクセントウォールなど)の可能性を模索する
  • 内装材料の提案力を高め、基本設計段階からの関与を強化する方向性を確認

理事からは「職人さんが材料を量って問屋さんに頼み、責任を持って施工するという形に戻っていくのではないか」「会社組織でやっている内装業者が自分たちで積算を全部して、材料を買うだけの関係になっていく可能性がある」といった意見が出されました。また、「情報の集約と共有が重要」「若手育成 と 技術継承 の仕組みづくりが課題」といった指摘もありました。

今回の理事会では、内装業界の構造変化に対応するための中長期的な視点での議論が行われ、NPO法人としての活動方針についても確認されました。次回は具体的な事業計画について協議する予定です。

次回の開催

【開催日時】2026年9月9日、2026年9月10日
【開催形式】対面会議
【参加費】無料
【対象】NPO会員 および オブザーバー
【主催】NPO法人 住環境工事研究会
【開催場所】兵庫例会
 視察など:未定

スケジュール

※日程や開催場所は変更となる場合がございます。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。