
ヤモリサミット2025出展レポート:DIYで広がる内装業とNPOの可能性
先日、参加した「ヤモリサミット」は、単なる業界イベントではなく、不動産とDIYの領域で起きている変革の最前線を体感する機会となりました。 「不動産の民主化」をミッションに掲げるヤモリが主催するこのサミットは、これまで一部の専門家に独占されてきた不動産事業の領域を、より多くの人が主体的に関わることができる世界への転換を象徴するものです。当NPOが「DIYを通じた暮らしの自立支援」をテーマに活動していることと、その問題意識は根底でつながっています。 各メーカーや施工会社の先進的な事例を目にする中で、改めて認識したのは、これからの内装業にとって重要なテーマとなる「プロにしかできない領域」と「DIYでもできる領域」の線引きの問題です。業界全体がこの問いと向き合い、新しい価値の形態を模索している——その広がりと可能性を今回のサミットで感じることができました。

ヤモリとNPOのつながり
ヤモリと私たちNPOが出会ったのは、今から数年前のことです。
NPOの活動方針として「近い探索と遠い探索」という取り組みを行っています。
近い探索 … 同業者や同じ地域の企業と情報交換しながら、現場の知見を共有する。
遠い探索 … 全く違うジャンルの業界に飛び込み、新しい視点やアイデアを吸収する。
この「遠い探索」の中で、理事のひとりが「面白い会社があるよ」と見つけてきたのがヤモリでした。そこで「ぜひお話を聞かせてください」と藤澤社長のもとを訪ねたところ、快く会談していただき、それが交流の始まりになったのです。
ヤモリの事業は「物件を安く購入し、必要な部分をリフォームして、利回りの良い運用を目指す」というもの。その中で「内装の力」「インテリアの価値」にしっかり目を向けていただいていることに、私たちも強く共感しました。
そうしたご縁から、今回で3回目となる「ヤモリサミット」に、私たちNPOも3年連続で出展させていただくことになったのです。

ヤモリサミットとは?
今回で3回目を迎える「ヤモリサミット」。
来場者とオンライン参加者を合わせて、なんと 約1,300人 が集う一大イベントとなりました。
会場には、すでに活躍している投資家の方々から、これから不動産投資を始めたいと考えている方まで、幅広い層が集結。セミナー形式で行われる登壇では、「きこり先生」や「パンツェッタ・ジローラモさん」をはじめとする多彩なパネラーが、不動産投資のノウハウや実践的な知見を熱く語っていました。
2フロアに分かれた会場は終日活気にあふれ、オンライン参加者も含めて大きな盛り上がりを見せていました。
そんな中で、私たちのブースでは「内装」「リフォーム」「DIY」といった、暮らしに直結するテーマについて、具体的な方法を来場者にお伝えする場となりました。投資の話と実際のリフォームの話が同時に展開されるのも、ヤモリサミットならではの魅力です。

ブース紹介①:Easy Wall Tape(壁紙屋本舗)
まず会場の入り口で出迎えてくれるのが、壁紙屋本舗さんの「Easy Wall Tape」。
名前のとおり、壁紙を中心にネットショップを展開している企業ですが、新しい提案として「大きなマスキングテープ」のような製品をリフォームに活用できるようにしたのがこのEasy Wall Tapeです。
あらかじめ糊が付いているため、壁はもちろん、金属・木製家具・扉など、さまざまな部分に貼れるのが特徴。通常の壁紙は幅92cmサイズですが、このテープは小さめ23cm幅なので、補修やアクセント使いにぴったりです。
何より嬉しいのは、その手軽さ。特別な道具もいらず、女性やDIY初心者でも気軽に扱えるので、「ちょっと直したい」「気分を変えたい」といったニーズにマッチしています。DIYでできる範囲を広げる、非常に可能性のあるアイテムですね。

ブース紹介②:日本ペイント(株式会社ささき秋田支店)
2つ目のブースは、日本ペイント。こちらはNPO理事でもある佐々木氏が担当されていました。
築古物件ではどうしても「建具」がそのまま残されてしまい、どこか垢抜けない印象になりがちです。しかし、そこにペンキによるカラーリングの妙を取り入れることで、ぐっと洗練された空間へと生まれ変わります。
当日は実際のサンプル品やカラーチャート、資料などを用意し、多くの来場者が手に取っていました。特に「DIYでもここまでできるのか!」と感じさせる提案は、参加者にとって大きな気づきになったと思います。
ペンキを使ったリフォームは、コストを抑えながらも物件の印象を大きく変えられる強力な手段。ぜひ多くの方に挑戦していただきたいアイデアです。

ブース紹介③:Farrow & Ball(株式会社ミライズ & Kobuchizawa Colour)
3つ目のブースは、イギリス発の高級ペイント Farrow & Ball(ファロー&ボール)。
今回は、株式会社ミライズとKobuchizawa Colourの植木さんをゲストに迎えての出展となりました。
ファロー&ボールの特徴は、独自のカラー体系にあります。全132色のペイントはすでに組み合わせが決められており、「アンダートーン」という概念によって全体の調和が取れる仕組みになっています。そのため、キーとなる色を一つ選ぶだけで、統一感を失わない空間づくりが可能になるのです。
さらに植木さんは、イギリスの直営店で長年勤務されていた経験を持ち、本場ならではの視点で来場者とカラーリングの楽しさについて語り合っていました。ブースは終始和やかで、色の持つ力を実感できる空間になっていたのが印象的です。

ブース紹介④:セニデコ(有限会社テンコー装飾 & 株式会社川幸)
最後にご紹介するのは、セニデコ。南仏(マルセイユ)に本社を置く、フランス漆喰のメーカーです。
フランスでは漆喰をDIYで扱う文化が根付いており、今回のブースでは漆喰をはじめ、DIY向けの各種ツールやペイント商品が展示されていました。漆喰というと専門的で難しそうなイメージがありますが、実際には「自分で触れてみる」ことができる素材でもあるのだと感じました。
さらに今回は本国からテリー社長が来日。来場者の中にフランス語が堪能な方がいらして、会場での会話が盛り上がる一幕もあり、国際的な雰囲気を感じられるブースになっていました。
セミナーは4部構成で行われ、各回60名(+立ち見)で延べ240人以上に来場頂いた盛況ぶり。ここでは概要のみをご紹介します。
最初に登壇されたのは、株式会社アトリエ・サンクレーヴ代表の小池氏。テーマは 「壁紙修繕におけるDIY範囲の見極め」 です。
内装業界でもよく話題になるのが「どこまでをDIYでやるべきか、どこからを業者に任せるべきか」という線引き。これを誤ってしまうと、余計な費用や手間がかかり、結果的に初期コストの回収が遅れてしまうこともあります。
その意味で、小池氏の講演は、投資家・DIY愛好家の双方にとって非常に有意義な内容でした。
2つ目のセミナーは、有限会社相互建装の木本氏による 「気軽にできる水回り&窓DIY相談室」。
窓回りやサッシ、水回りといった部分はどうしても劣化が目立ちやすく、物件価値を左右するポイントでもあります。しかし一方で、DIYでのケアは難しそうに感じられる箇所でもあります。
相互建装さんは「ダイノックシート」をはじめとするシート施工のスペシャリスト。キッチンの戸棚やサッシまわりなど、従来なら交換しか方法がないと思われていた部分も、シートの施工によって手軽に美しく仕上げることが可能です。
当日の会場では「水回りのDIYってどうすればきれいにできるの?」「下地の作り方のコツは?」といった質問が相次ぎ、参加者の関心の高さを物語っていました。
3つ目のセミナーは、アトリエ・サンクレーヴの田村氏と、トリプルインサイドの内本氏によるトークセッション。テーマは 「古さを味に変える、築古物件の修繕のコツ」 でした。
投資物件の改修を考えるとき、「新築同然にリフォームしたい」と考える方も多いと思います。しかし現実には、コストをかけて新築のようにしても必ずしも投資回収ができるわけではありません。
そこで提案されたのが「古さを味わいに変える」リフォームの発想。既存の素材や雰囲気を活かしながら修繕を行うことで、コストを抑えつつ魅力ある空間を作る方法が紹介されました。
このテーマは特に関心が高かったようで、会場は満席どころか立ち見も多数。急遽ヤモリのスタッフさんにお願いして椅子を追加するほどの盛況ぶりで、大きな注目を集めたセミナーでした。
最後のセミナーを飾ったのは、ワタベインフィル株式会社 渡部氏による 「DIYで逆転発想の高利回り不動産投資!」。
小規模投資を始める際、多くの人が「失敗したらどうしよう」と躊躇してしまいます。そんな中、渡部氏は「不動産はわらしべ長者だ」と表現し、古くて価値が低いように見える物件こそ勇気を持って購入すべきだと語りました。
もちろんリスクはゼロではありません。しかし「値崩れすることはあっても、大きく損をするケースは稀。むしろ挑戦することで次のステップにつながる」と力強いメッセージを発信。
さらに、購入した物件を自社でリフォームして高く貸し出す手法や、住宅だけでなく店舗用物件に用途変更して新しい収益モデルを作るという発想も提示されました。
多くの参加者にとって「不動産投資の選択肢は住宅だけではない」という気づきを与えた、印象的なセミナーとなりました。
ヤモリサミット2025 gallery
編集後記
今回のヤモリサミットは、不動産投資の最新動向からDIYの実践的な知恵まで、幅広い学びを得られる場となりました。私たちNPOにとっても、内装業界の視点からDIYをどう社会に広げていけるかを考える、貴重な機会となったと感じています。 これからの時代、住まいを守る力は「プロの技術」だけでなく、「生活者自身の手」にも広がっていくべきだと考えています。DIYの裾野が広がれば、不動産価値の維持だけでなく、地域の空き家問題の解決や暮らしの自立にもつながっていくはずです。 NPOとして、私たちは今後も「プロの知識を惜しみなく伝え、DIYの可能性を社会に広げる」活動を続けていきます。同業者の皆さまとも手を取り合いながら、新しい暮らしの形を一緒に作っていけたらと願っています。