[視察] 内装業の単価アップを実現する高級建材「サンフット」|北三の品質とこだわりに学ぶ差別化戦略

北三視察の様子

高級内装材「サンフット」で内装業の未来を拓く|北三が示す品質と職人の誇り

内装業界が直面する 低単価、 高齢化 、 人材不足 という長年の課題。これらを乗り越え、持続可能な成長を実現するためには、私たち自身が新たな価値を見出し、事業構造を変革していく必要があります。この切実な思いを胸に、内装業界NPOの理事として、先日、私たちはある重要な視察と体験を行いました。
今回の視察で焦点を当てたのは、北三株式会社が手掛ける高級内装材**「サンフット」**です。創業101年を迎える老舗企業が、いかにして現代のニーズに応え、高品質な天然木材を提供し続けているのか。そして、この「サンフット」が、私たちの業界が抱える課題に対し、どのような解決策をもたらし得るのか――。本稿では、私、ミライズ山口の視点から、その視察の様子と、そこで得られた示唆について、深く掘り下げていきたいと思います。視察中の会話から見えてきた、内装業界の未来を拓くヒントが、ここにあります。

こだわりを形にする内装材サンフット

高級内装材サンフットと高品質な北三のこだわり

内装業界が抱える低単価、高齢化、人材不足といった課題に対し、高級商材の導入は単価アップとブランド価値向上を実現する有効な解決策となり得ます。その選択肢の一つとして注目されるのが、北三株式会社が手掛けるサンフットシートです。

北三は1924年創業、今年で101年を迎える老舗企業であり、その歴史は下駄の表面材に薄く削った木材を貼り合わせたことから始まりました。その後、大型スライサーの開発により、家具や内装材、楽器など多様な分野で使われる 突板(つきいた)の製造を本格化。同社の小林氏は、「1960年代になりまして、ええ、そこからうちの会社の方で二次加工… 不燃認定 が取れているサンフットシート、それから不燃パネル、そういったものを作るようになり。内装材の方にも着手するようになり、今に至るようになりました」と語るように、時代のニーズに応じた製品開発を進めてきました。

サンフットシートの大きな特徴は、その品質への徹底したこだわりです。突板は「0.2mmから0.3mmの間」という極薄の木材をスライスして作られ、その製造工程では、厳選された丸太の選材から始まり、煮込み、裁断、乾燥といった熟練の技術と手間を要する工程を経て製品化されます。木本氏が「中国の突き板シートを触ったんですけど、めちゃくちゃ臭くて…なんかそういう粗悪品なものっていうのはイメージがあったんですけど」と指摘するように、海外製品の中には品質に課題があるものも存在する一方で、北三は「本物を使っております」と小林氏が断言するほど、天然木の素材そのものの良さを追求しています。

また、サンフットシートは「不燃の認定をとっているのがウレタン塗装で、一応とっておりますね」と小林氏が述べるように、機能性にも優れています。天然木ならではの風合いと、長年の経験に裏打ちされた高い品質は、まさに高級商材としての価値を確立しています。日本国内で突板の製造から二次加工までを一貫して行う企業は北三のみであり、この一貫生産体制が高品質を支える大きな要因となっています。

山口剛

Point of View

品質へのこだわりが、最終的に職人の誇りを守ることに繋がります。大量生産ではなく、丁寧なモノづくりが評価される時代にこそ、私たちが価値を見出し直すべきだと感じました。

こだわり素材が無い商業界をリードする

市場が求める自然素材と設計士のこだわり

現代の建築・内装市場では、 自然素材 への回帰が顕著です。特に、その中でも設計士から絶大な支持を集めているのが、ホワイトオークウォールナットといった木材の素材感です。北三の小林氏も、「基本的にオーク、ウォールナット材。その二大種がメインで生産作ります」と述べており、これらの木材が市場の主流を占めていることがわかります。

海外からの買い付けが中心となる一方で、日本の木材については、小林氏が「どうしても枝の少ない台で、太い台からこう皆さん伐採していって、そちらから使っていったものなので、基本的に今ないっていうのは枝が多くて、まあ多分径が細い台が多いです」と説明するように、良質な広葉樹の減少という課題を抱えています。しかし、その中でもタモやセン、ヒノキ、ケヤキといった日本材も、その特性を理解した上で活用されています。

山口剛

Point of View

自然素材は「流行」ではなく「原点回帰」だと改めて実感しました。素材を活かす美意識と、設計士・職人の協働によって、日本の内装文化はさらに深まると信じています。

設計段階で指名される事の重要性

自然素材への回帰:設計士が選ぶオークとウォールナット、そして施工の妙技

サンフットのような高級商材は、その品質の高さゆえに、施工には特別な技術と配慮が求められます。相互建装の木本氏は、サンフットシートの施工について「まず臭気作業をやるってことですよね。うん、臭気作業、匂い、匂いですね。そこはまず注意していただきたい」と、独特の匂いへの配慮を挙げます。また、「三次元の施工はちょっと厳しいですね」と、複雑な形状への対応の難しさも指摘しています。

天然木であるため、木材の種類によって硬さや割れやすさが異なり、「結局ね、木の種類によって割れてくるよねとか、これ硬いからこのデズレきついよねとか」と木本氏が語るように、個々の木材の特性を見極める必要があります。さらに、木目の連続性をどのように表現するかという「柄の出し方」も重要な要素です。「どの順序に貼ってったほうが見切り倍がいいかとか」といった、美観を追求するための細かな調整が求められるのです。

小林氏と木本氏の会話からも、天然木の扱いには職人の経験とセンスが不可欠であることがわかります。木目をいかに美しく見せるか、あるいは節といった天然木ならではの特性をデザインとして活かすかなど、施工現場での判断が最終的な仕上がりに大きく影響します。特に「ブックマッチ」や「ランダムマッチ」といった貼り方は、その空間の印象を決定づける重要な選択となります。

高級内装材の導入は、単なる材料費のアップではなく、それを扱う職人の技術力やデザイン提案力といった付加価値を最大化する機会と言えるでしょう。

山口剛

Point of View

天然木は一本ごとに個性があり、その違いを見極めるのが職人の技。手間を惜しまぬ仕事が、空間に“生きた素材感”を宿すのだと、改めて現場で痛感しました。

内装材は今後どの方向に向かうのだろうか?

逆境を乗り越える:サンフットが拓く内装業界の未来

低単価競争、職人の高齢化、そして深刻な人材不足。これらは内装業界が直面する喫緊の課題です。しかし、こうした逆境を乗り越え、持続可能なビジネスへと転換する道筋として、高級商材「サンフット」の導入が新たな可能性を提示します。サンフットは単なる高価な材料ではありません。それは、貴社の事業を再構築し、未来へ投資するための重要な一手となり得ます。

サンフットがもたらす高単価と高付加価値

従来の低単価競争から抜け出すためには、他社との差別化が不可欠です。サンフットのような高級商材を扱うことは、貴社のブランド価値を向上させ、高所得層の顧客獲得に繋がります。これにより、単価アップと利益率の改善が期待できます。

北三の小林氏は、同社の突き板製品が豪華寝台列車の内装に採用された事例に触れ、「元々はそこがスタートだったんですね。そうしたら段々、じゃあ、うちもやりたいっていう風に手を上げる企業が増えて」と語っています。これは、サンフットが単なる建材ではなく、プロジェクト全体の価値を高める商材として認められている証拠です。高級プロジェクトへの参画は、貴社の実績と信頼性を高め、さらなる高単価案件へと繋がる好循環を生み出します。

北三の一貫生産体制が支える品質と信頼性

高級商材の取り扱いには、品質への確固たる信頼が不可欠です。北三は、日本国内で唯一、突き板の製造から二次加工までを一貫して行う体制を確立しています。小林氏が「両方やってる会社っていうのは日本で弊社だけです」と胸を張るこの体制こそが、サンフットの安定した高品質を保証する根拠となっています。

また、インタビューでは、過去に他社の中国製シートで「めちゃくちゃ臭くて」といった問題があったことが語られており、品質の重要性が改めて浮き彫りになりました。北三は、自社の製品について「本物を使っております」と明言し、ウレタンクリア塗装による不燃認定の取得など、機能性においても高い基準をクリアしています。

施工上の疑問や課題に対しても、北三はサポートを提供します。小林氏は、設計士からの「この木だったらどれぐらい集まるの?とか」といった質問に対し、供給量や色合い、柄の指定など、きめ細やかな提案をしていることを示しています。こうしたメーカーの手厚いサポートは、高級商材を初めて扱う業者にとって大きな安心材料となるでしょう。

未来への投資としての高級商材導入

内装業界の高齢化と人材不足は深刻ですが、高級商材の導入は、この問題に対する一つの解決策となり得ます。高単価の仕事は、職人一人ひとりの生産性を高め、より高い報酬を可能にします。これは、若手の人材確保や、熟練の職人が持つ 技術継承 を促すインセンティブとなるでしょう。

サンフットのような天然木を扱うことは、職人にとっての「面白さ」にも繋がります。木本氏が「僕らはサンフットってやる方が面白いですね。やっぱり天然物触ってる方が僕は面白いです」と語るように、一つとして同じものがない天然木の特性と向き合うことは、職人の技術と感性を刺激し、仕事へのモチベーションを高めます

単価アップに成功すれば、企業は従業員の育成や労働環境の改善により多くの投資が可能となり、結果として持続可能なビジネスモデルを構築できます。サンフットの導入は、単に高価な材料を使うということ以上の、貴社の未来を切り拓く戦略的な一歩となるはずです。

山口剛

Point of View

課題は多いが、悲観する必要はありません。高品質商材を扱う挑戦は、職人の技術を再評価し、業界の地位を押し上げる絶好の機会だと考えています。若手が「この仕事を続けたい」と思える環境を整えるには、誇りを持てる商材と現場が必要です。高級内装材の導入は、次世代への橋渡しだと確信しています。

編集後記

今回の北三さん視察は、まさに「本物」との対話でした。「中国の突き板シートを触ったんですけど、めちゃくちゃ臭くて…なんかそういう粗悪品なものっていうのはイメージがあったんですけど」とあったように、品質への先入観を良い意味で裏切られた方も多いのではないでしょうか。
低単価の波に揉まれる私たち内装業界にとって、北三さんのサンフットは、ただの高価格帯商材ではありません。それは、職人の技が光る「面白い」仕事を生み出し、ひいては業界全体の価値を底上げする可能性を秘めていると感じました。この出会いが、皆さんの新たな挑戦のきっかけとなれば幸いです。

Gallery

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。




ヤモリサミット2025出展レポート|DIYと内装業の未来を考えるNPOの取り組み

DIYについてのセミナーを聴講する参加者

ヤモリサミット2025出展レポート:DIYで広がる内装業とNPOの可能性

先日、参加した「ヤモリサミット」は、単なる業界イベントではなく、不動産とDIYの領域で起きている変革の最前線を体感する機会となりました。
「不動産の民主化」をミッションに掲げるヤモリが主催するこのサミットは、これまで一部の専門家に独占されてきた不動産事業の領域を、より多くの人が主体的に関わることができる世界への転換を象徴するものです。当NPOが「DIYを通じた暮らしの自立支援」をテーマに活動していることと、その問題意識は根底でつながっています。
各メーカーや施工会社の先進的な事例を目にする中で、改めて認識したのは、これからの内装業にとって重要なテーマとなる「プロにしかできない領域」と「DIYでもできる領域」の線引きの問題です。業界全体がこの問いと向き合い、新しい価値の形態を模索している——その広がりと可能性を今回のサミットで感じることができました。

2022年ヤモリ訪問の際の記念撮影 藤沢社長と共に

ヤモリとNPOのつながり

ヤモリと私たちNPOが出会ったのは、今から数年前のことです。
NPOの活動方針として「近い探索と遠い探索」という取り組みを行っています。
近い探索 … 同業者や同じ地域の企業と情報交換しながら、現場の知見を共有する。
遠い探索 … 全く違うジャンルの業界に飛び込み、新しい視点やアイデアを吸収する。
この「遠い探索」の中で、理事のひとりが「面白い会社があるよ」と見つけてきたのがヤモリでした。そこで「ぜひお話を聞かせてください」と藤澤社長のもとを訪ねたところ、快く会談していただき、それが交流の始まりになったのです。
ヤモリの事業は「物件を安く購入し、必要な部分をリフォームして、利回りの良い運用を目指す」というもの。その中で「内装の力」「インテリアの価値」にしっかり目を向けていただいていることに、私たちも強く共感しました。
そうしたご縁から、今回で3回目となる「ヤモリサミット」に、私たちNPOも3年連続で出展させていただくことになったのです。

ヤモリサミット2023の様子、2025年は浅草橋で開催された

ヤモリサミットとは?

今回で3回目を迎える「ヤモリサミット」。
来場者とオンライン参加者を合わせて、なんと 約1,300人 が集う一大イベントとなりました。
会場には、すでに活躍している投資家の方々から、これから不動産投資を始めたいと考えている方まで、幅広い層が集結。セミナー形式で行われる登壇では、「きこり先生」や「パンツェッタ・ジローラモさん」をはじめとする多彩なパネラーが、不動産投資のノウハウや実践的な知見を熱く語っていました。
2フロアに分かれた会場は終日活気にあふれ、オンライン参加者も含めて大きな盛り上がりを見せていました。
そんな中で、私たちのブースでは「内装」「リフォーム」「DIY」といった、暮らしに直結するテーマについて、具体的な方法を来場者にお伝えする場となりました。投資の話と実際のリフォームの話が同時に展開されるのも、ヤモリサミットならではの魅力です。

イージーウォールテープに興味を示す参加者たち

ブース紹介①:Easy Wall Tape(壁紙屋本舗)

まず会場の入り口で出迎えてくれるのが、壁紙屋本舗さんの「Easy Wall Tape」。
名前のとおり、壁紙を中心にネットショップを展開している企業ですが、新しい提案として「大きなマスキングテープ」のような製品をリフォームに活用できるようにしたのがこのEasy Wall Tapeです。
あらかじめ糊が付いているため、壁はもちろん、金属・木製家具・扉など、さまざまな部分に貼れるのが特徴。通常の壁紙は幅92cmサイズですが、このテープは小さめ23cm幅なので、補修やアクセント使いにぴったりです。
何より嬉しいのは、その手軽さ。特別な道具もいらず、女性やDIY初心者でも気軽に扱えるので、「ちょっと直したい」「気分を変えたい」といったニーズにマッチしています。DIYでできる範囲を広げる、非常に可能性のあるアイテムですね。

ペイントのブース 古くなった建具もDIYで綺麗になる

ブース紹介②:日本ペイント(株式会社ささき秋田支店)

2つ目のブースは、日本ペイント。こちらはNPO理事でもある佐々木氏が担当されていました。
築古物件ではどうしても「建具」がそのまま残されてしまい、どこか垢抜けない印象になりがちです。しかし、そこにペンキによるカラーリングの妙を取り入れることで、ぐっと洗練された空間へと生まれ変わります。
当日は実際のサンプル品やカラーチャート、資料などを用意し、多くの来場者が手に取っていました。特に「DIYでもここまでできるのか!」と感じさせる提案は、参加者にとって大きな気づきになったと思います。
ペンキを使ったリフォームは、コストを抑えながらも物件の印象を大きく変えられる強力な手段。ぜひ多くの方に挑戦していただきたいアイデアです。

farrow&ballの世界観を伝える植木氏

ブース紹介③:Farrow & Ball(株式会社ミライズ & Kobuchizawa Colour)

3つ目のブースは、イギリス発の高級ペイント Farrow & Ball(ファロー&ボール)。
今回は、株式会社ミライズとKobuchizawa Colourの植木さんをゲストに迎えての出展となりました。
ファロー&ボールの特徴は、独自のカラー体系にあります。全132色のペイントはすでに組み合わせが決められており、「アンダートーン」という概念によって全体の調和が取れる仕組みになっています。そのため、キーとなる色を一つ選ぶだけで、統一感を失わない空間づくりが可能になるのです。
さらに植木さんは、イギリスの直営店で長年勤務されていた経験を持ち、本場ならではの視点で来場者とカラーリングの楽しさについて語り合っていました。ブースは終始和やかで、色の持つ力を実感できる空間になっていたのが印象的です。

セニデコのブース 漆喰とペイントもDIYで。本社のテリー社長も来日

ブース紹介④:セニデコ(有限会社テンコー装飾 & 株式会社川幸)

最後にご紹介するのは、セニデコ。南仏(マルセイユ)に本社を置く、フランス漆喰のメーカーです。
フランスでは漆喰をDIYで扱う文化が根付いており、今回のブースでは漆喰をはじめ、DIY向けの各種ツールやペイント商品が展示されていました。漆喰というと専門的で難しそうなイメージがありますが、実際には「自分で触れてみる」ことができる素材でもあるのだと感じました。
さらに今回は本国からテリー社長が来日。来場者の中にフランス語が堪能な方がいらして、会場での会話が盛り上がる一幕もあり、国際的な雰囲気を感じられるブースになっていました。

小池理事の講演の様子

セミナー紹介①:壁紙修繕におけるDIY範囲の見極め(株式会社アトリエ・サンクレーヴ)

セミナーは4部構成で行われ、各回60名(+立ち見)で延べ240人以上に来場頂いた盛況ぶり。ここでは概要のみをご紹介します。
最初に登壇されたのは、株式会社アトリエ・サンクレーヴ代表の小池氏。テーマは 「壁紙修繕におけるDIY範囲の見極め」 です。
内装業界でもよく話題になるのが「どこまでをDIYでやるべきか、どこからを業者に任せるべきか」という線引き。これを誤ってしまうと、余計な費用や手間がかかり、結果的に初期コストの回収が遅れてしまうこともあります。
その意味で、小池氏の講演は、投資家・DIY愛好家の双方にとって非常に有意義な内容でした。

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相互建装木本氏の講演 水回りDIYに興味をもつ参加者

セミナー紹介②:気軽にできる水回り&窓DIY相談室(有限会社相互建装)

2つ目のセミナーは、有限会社相互建装の木本氏による 「気軽にできる水回り&窓DIY相談室」。
窓回りやサッシ、水回りといった部分はどうしても劣化が目立ちやすく、物件価値を左右するポイントでもあります。しかし一方で、DIYでのケアは難しそうに感じられる箇所でもあります。
相互建装さんは「ダイノックシート」をはじめとするシート施工のスペシャリスト。キッチンの戸棚やサッシまわりなど、従来なら交換しか方法がないと思われていた部分も、シートの施工によって手軽に美しく仕上げることが可能です。
当日の会場では「水回りのDIYってどうすればきれいにできるの?」「下地の作り方のコツは?」といった質問が相次ぎ、参加者の関心の高さを物語っていました。

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内本氏と田村氏の講演の様子

セミナー紹介③:古さを味に変える、築古物件の修繕のコツ(アトリエ・サンクレーヴ × トリプルインサイド)

3つ目のセミナーは、アトリエ・サンクレーヴの田村氏と、トリプルインサイドの内本氏によるトークセッション。テーマは 「古さを味に変える、築古物件の修繕のコツ」 でした。
投資物件の改修を考えるとき、「新築同然にリフォームしたい」と考える方も多いと思います。しかし現実には、コストをかけて新築のようにしても必ずしも投資回収ができるわけではありません。
そこで提案されたのが「古さを味わいに変える」リフォームの発想。既存の素材や雰囲気を活かしながら修繕を行うことで、コストを抑えつつ魅力ある空間を作る方法が紹介されました。
このテーマは特に関心が高かったようで、会場は満席どころか立ち見も多数。急遽ヤモリのスタッフさんにお願いして椅子を追加するほどの盛況ぶりで、大きな注目を集めたセミナーでした。

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何事も勇気をもって行動を起こす事と力説

セミナー紹介④:DIYで逆転発想の高利回り不動産投資!(ワタベインフィル株式会社)

最後のセミナーを飾ったのは、ワタベインフィル株式会社 渡部氏による 「DIYで逆転発想の高利回り不動産投資!」。
小規模投資を始める際、多くの人が「失敗したらどうしよう」と躊躇してしまいます。そんな中、渡部氏は「不動産はわらしべ長者だ」と表現し、古くて価値が低いように見える物件こそ勇気を持って購入すべきだと語りました。
もちろんリスクはゼロではありません。しかし「値崩れすることはあっても、大きく損をするケースは稀。むしろ挑戦することで次のステップにつながる」と力強いメッセージを発信。
さらに、購入した物件を自社でリフォームして高く貸し出す手法や、住宅だけでなく店舗用物件に 用途変更 して新しい収益モデルを作るという発想も提示されました。
多くの参加者にとって「不動産投資の選択肢は住宅だけではない」という気づきを与えた、印象的なセミナーとなりました。

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ヤモリサミット2025 gallery














































編集後記

今回のヤモリサミットは、不動産投資の最新動向からDIYの実践的な知恵まで、幅広い学びを得られる場となりました。私たちNPOにとっても、内装業界の視点からDIYをどう社会に広げていけるかを考える、貴重な機会となったと感じています。
これからの時代、住まいを守る力は「プロの技術」だけでなく、「生活者自身の手」にも広がっていくべきだと考えています。DIYの裾野が広がれば、不動産価値の維持だけでなく、地域の空き家問題(空き家活用)の解決や暮らしの自立にもつながっていくはずです。
NPOとして、私たちは今後も「プロの知識を惜しみなく伝え、DIYの可能性を社会に広げる」活動を続けていきます。同業者の皆さまとも手を取り合いながら、新しい暮らしの形を一緒に作っていけたらと願っています。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。




​DIYで逆転発想の高利回り不動産投資! ヤモリサミット2025

渡部理事の講演の様子

渡部氏講演レポート|築古物件DIYと投資の高利回り戦略

不動産投資と聞くと、多額の資金や専門知識が必要だと構えてしまいがちです。けれども実際には、小さな工夫やDIYの積み重ねが思いがけない成果へとつながることがあります。築古物件の修繕や空間の再生に取り組む中で、手間を惜しまない姿勢や柔軟な発想が新しい価値を生み出す――そんな逆転の発想が投資の可能性を大きく広げていきます。

イージーウォールテープを手に取る参加者

DIYから始まる不動産投資との出会い

渡部氏とは共にNPO理事として長く活動を共にしてきました。今回は久しぶりに北海道から参加し、会場に立って語る姿に胸が熱くなりました。長年現場の職人や施工会社と関わりを持ちながら管理者の立場から見てきた経験が、彼の言葉に独特の重みを与えていました。
渡部氏はまず、自身が不動産投資に関心を持つに至った経緯を振り返りました。2002年、札幌で初めて物件を購入したときのことです。900万円の中古住宅を取得し、通常なら500万円以上かかる改修費を350万円に抑えました。結果として物件は1,680万円で売却でき、大きな成功体験につながりました。
「最初の一歩を踏み出すときは、不安がなかったわけではありません。ただ、動いてから考えようと思ったのです」と渡部氏は語りました。施工は職人に委ねながらも、管理者として計画とコストをコントロールし、数字で成果を確認する。そこに投資としての可能性を見出したことが強調されました。
続いて彼は、DIYの位置づけについても触れました。初期の頃は予算の都合で自らも一部手を動かす場面があったとしつつ、基本は「施工はプロに任せる」という姿勢を貫いてきたと語ります。その理由は、仕上がりや安全性を担保すること、そして時間の効率性でした。DIYは物件の魅力を高めるための補助的な手段にすぎず、本質的にはプロの知見をどう活かすかが重要である――そうした整理が、参加者にとっても大きな学びとなったはずです。
「私は管理者の視点から、不動産と施工の橋渡しをしてきました。プロに頼む部分と自ら判断する部分、その線引きをどこに置くかで結果は大きく変わります」と渡部氏が述べたとき、会場から深い頷きが見られました。
私自身、NPOで理事を務める中で数多くの修繕や再生の事例を見てきました。その中で、渡部氏の判断は一貫して合理的であり、同時に未来を見据えたものであったと感じます。彼の歩みは、不動産投資が単なる資金運用ではなく、管理と連携の積み重ねで成り立つことを示していました。

NPO法人 住環境工事研究会 理事 山口剛

Point of View

「北海道から久しぶりに参加した渡部氏の話は、私にとっても改めて学びが多いものでした。施工を担うのはプロですが、管理者がどう判断し、どこに責任を置くかによって結果が変わる。その姿勢は、私たちがNPOで共有してきた理念そのものだと感じました」

何事も勇気をもって行動を起こす事と力説

築古再生と高利回りの挑戦

渡部氏が特に力を注いできたのは、築古物件の再生でした。北海道という寒冷地特有の条件に加え、築年数の経過した住宅やアパートが多く流通している地域性もあり、いかに低コストで再生し高い収益性を確保するかが大きな課題となっていました。そこで彼は、管理者としての視点から「いかにプロの力を効率的に活かすか」を徹底してきたのです。
具体的な事例として紹介されたのは、築40年を超える木造アパートの改修でした。外観は老朽化が進み、内部も水回りや壁紙が傷んでおり、一般的には解体や大規模な リノベーション が提案されるような物件でした。しかし渡部氏は「限られた投資で収益を最大化する」という視点から、フルリノベーションではなく部分的な再生を選択しました。
判断の基準となったのは、入居者のニーズと地域の相場です。例えば、すべての部屋を新築同然に仕上げる必要はなく、清潔感と安全性を確保したうえで、住み心地に直結するポイントに重点を置く。壁紙は劣化が激しい部分のみを貼り替え、床は必要に応じてクッションフロアを施工。水回りは最低限の更新にとどめ、全体の予算を抑えました。
“こうした判断が奏功し、物件は短期間で入居が決まり、想定以上の利回りを実現することができたのです。
渡部氏が強調していたのは「DIYを取り入れるかどうかは、収益性を高めるための一つの選択肢にすぎない」という点でした。築古物件の再生は往々にしてコストと労力が膨らみがちですが、管理者が冷静に線引きをし、プロの手を借りる部分を見極めることが投資成功の鍵となります。自身が手を動かす場面があったとしても、それは補助的な意味合いにとどめ、あくまで全体の計画を統括することが重要であると語られました。”
“さらに彼は、NPO活動を通じて培ったネットワークの価値にも触れました。信頼できる施工者や問屋とのつながりがあることで、築古物件の改修にかかるコストを抑えつつ品質を担保できたこと。その背景には、長年にわたり現場に関わるプロの知恵を尊重し、対等な立場で意見を交わしてきた経験があります。これは単なる投資家と施工者の関係ではなく、共同で価値を創り上げる姿勢にほかなりません。
築古物件はリスクがある一方で、発想を変えれば高利回りにつながる余地が大きい分野です。渡部氏の取り組みは、華やかな成功譚ではなく、管理者としての冷静な判断と、現場のプロとの協働によって積み重ねられた実践でした。その歩みは、参加者にとって「投資とは数字だけでなく人との信頼関係で成り立つ」という示唆を与えるものになったのです。

NPO法人 住環境工事研究会 理事 山口剛

Point of View

「渡部さんのお話を聞きながら、改めて感じたのは、築古物件の再生には単なる修繕の知識以上に、管理者としての判断力と協働の姿勢が不可欠だということです。DIYで手を動かす楽しさも大切ですが、最終的に価値を高めるのは、信頼できるプロとの関わり方や長期的な視野だと思います。NPOという場でこうして知見を共有できるのも、全国の仲間と築いてきた信頼があってこそ。学び合いの輪を、次の世代にもつなげたいと考えています。」

築古再生と管理者のまなざし

渡部氏が北海道から久々にNPO活動へ参加した背景には、地域で取り組んできた築古物件の管理経験がある。彼は施工者ではないが、長年にわたり数多くのプロと協働し、現場の課題と向き合ってきた管理者としての視点を持っている。
そのため、会場でも「築古物件をどう再生するか」という問いに対して、実践的かつ俯瞰的な言葉を重ねた。 渡部氏はまず「見えない部分こそが資産価値を決める」と強調した。壁紙や床材など表層を整えることは大切だが、それ以上に配管や下地といった目に見えない部分の健全性が長期の収益性を左右する。DIYで表層を整えることは投資家自身の喜びとなるが、基盤に関わる部分はプロの力を借りるべきであり、この線引きができるかどうかが成功の分岐点になると語った。
また、管理者の立場から特に重要視していたのが「信頼できるネットワーク」の存在である。渡部氏は、自身が北海道で築いてきた工務店や職人との関係を例に挙げ「施工者と管理者は対立する関係ではなく、協働によって初めて成果が出る」と述べた。修繕を依頼する際にも、ただ価格で選ぶのではなく、長期的な視野で付き合えるかを見極めることが大切だという。彼の言葉には、遠隔地から久々に参加した理事としての真摯な思いが滲んでいた。
さらに渡部氏は、築古物件を活かすことの社会的な意義についても触れた。新築需要が減少し、既存住宅の活用が叫ばれる中、築古物件の再生は単なる投資対象にとどまらず、地域資源 の活用や環境負荷の低減にもつながる。管理者としての選択は、個人の利益だけでなく地域の未来を左右するのだという視点で語られた。
参加者からの「どの程度DIYに任せ、どこからプロに依頼すべきか」という質問に対しても、渡部氏は「DIYは投資家に自信と愛着を与える一方で、リスクを抱える部分を見極めないと本末転倒になる」と応じた。
その落ち着いた語り口は、施工の現場を直接担わない管理者だからこそ持てる冷静なバランス感覚を示していた。 渡部氏の言葉は、築古物件をめぐる判断に迷う多くの参加者にとって指針となり、同じ管理者の立場で活動する山口氏にとっても深く共鳴するものだった。

NPO法人 住環境工事研究会 理事 山口剛

Point of View

「渡部さんが語られた“見えない部分こそ価値を決める”という言葉には強く共感しました。私自身、管理者として数多くの事例に関わる中で、表面の美しさだけでは資産価値は守れないと痛感しています。DIYの喜びを大切にしつつ、安心と収益を確保するためには、プロに託すべき部分を見極めることが欠かせません。NPOの仲間とこうして経験を共有できることが、次の世代に知恵をつなぐ大きな力になると改めて感じています。」

編集後記

今回のセッションは、施工の現場を直接担わない管理者だからこそ見えてくる「DIYとプロの境界線」が大きなテーマとなりました。渡部氏の経験に基づいた冷静な視点は、築古物件再生の本質を浮かび上がらせ、山口氏の共感の言葉と共に、参加者に確かな指針を示していました。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。




築古物件リフォームの知恵|ヤモリサミット2025

内本氏と田村氏の講演の様子

古さを味に変える築古物件リフォーム|DIYとプロに学ぶ修繕のコツ

築古の住まいには、年月を重ねたからこそ漂う独特の趣があります。けれど同時に、老朽化や不具合とどう向き合うかが課題になります。大掛かりな工事だけが答えではなく、小さな工夫や手入れによって、その古さを「味わい」へと変えることも可能です。本稿では、プロたちの経験を交えながら、安心して暮らしを整えるための修繕の知恵を辿っていきます。

築古だからこそ発想の転換が必要

築古物件リフォームの第一歩|見えない部分を守る基礎の修繕

築古物件を前にしたとき、まず心に留めたいのは「見えない部分こそが命」ということです。外から眺めれば壁紙や床材の劣化に目を奪われがちですが、実際に建物の寿命を決めるのは下地や屋根、基礎といった内部の構造です。ここをないがしろにすれば、どれほど美しい意匠を施しても、やがて大きな修繕費を伴う事態に直面してしまいます。
内本氏はセッションの中でこう語りました。
「下地が大事です。仕上げてしまえば見えない部分は、今しか直せないんです」
その言葉には、現場で培われた実感がこもっていました。仕上げの陰に隠れる箇所こそ、最初の改修時にしっかりと手を入れるべき場所です。
特に留意すべきは「頭」と「足元」です。頭は屋根や天井、足元は基礎や土台にあたります。瓦屋根はしばしば敬遠されがちですが、現代の乾式工法を用いれば重量の問題も解消され、むしろ長寿命で維持管理しやすい素材です。台風後の点検は欠かせませんが、適切に扱えば優れた屋根材として力を発揮します。
一方、足元にはシロアリや腐朽のリスクが潜みます。阪神大震災で倒壊した住宅の多くが、実は基礎部分の劣化を要因としていました。普段は目に触れない箇所だからこそ、改修時には特に注意を払う必要があります。
内本氏は続けます。
「屋根の雨漏りは一滴でも放置してはいけません。修繕を怠れば、やがて全壊につながります」
会場にいた多くの参加者が深くうなずいていたのが印象的でした。
さらに外構においては、電柱の移設のように土地の使い勝手を左右する工夫もあります。制約だと諦めがちな事柄も、正しい申請を行えば改善できる場合があり、限られた土地を有効に活用する鍵となります。
築古物件の魅力を引き出す第一歩は、意匠を整えることではなく、建物を支える見えない部分をいかに健全に保つかという姿勢にあります。ここに投資を惜しまなければ、長期的な安心が得られるのです。

山口剛

Point of View

「築古物件に向き合うとき、どうしても見た目の古さに目がいきがちです。しかし実際には、屋根や基礎といった普段見えない部分にこそ、本当の価値が潜んでいます。内本氏の言葉にあった『下地が大事』という指摘は、私にとっても大きな学びでした。見えない部分を大切にする姿勢こそが、未来の安心を築く礎となるのだと改めて感じています」

古さと調和する内装リフォーム|水回り・設備の境界線と工夫

築古物件を再生するときに多くの人が悩むのは、「どこまでDIYで可能か、どこからプロに任せるべきか」という境界線です。壁紙の張替えや床材の変更などは手を動かせば比較的取り組みやすいですが、水回りや電気設備はリスクを伴うため注意が必要です。水漏れや火災といった重大な事故につながりかねず、専門の技術を持つ職人に依頼するのが安心です。
内本氏は次のように強調しました。
「水回りや電気設備はDIYで無理にやるべきではありません。特に分電盤は寿命があり、古いままでは火災の危険性もあるんです」
この指摘は、表面的な修繕に気を取られがちな私たちにとって重要な警鐘といえます。
一方で、DIYでも工夫できる余地は多く存在します。例えば、壁紙を一面だけ張り替える「アクセントクロス」は初心者でも取り入れやすい方法です。田村氏は、古い漆喰壁の一部に深い緑色の壁紙を加えた事例を紹介し、「空間全体を張り替えなくても印象は大きく変わる」と話しました。小規模な工夫で古さを和らげ、新しさと調和させることが可能です。
また、設備の刷新を最小限に抑えつつ雰囲気を高める工夫も紹介されました。田村氏は「既存の窓枠の色を拾い、それに合わせたリメイクシートを使えば古さが目立ちにくくなる」と提案しました。新しい設備を入れるほどに古さが際立つケースも多く、むしろ古い要素に寄り添った工夫が効果を発揮するのです。
さらに、照明や洗面ボウルなどの小物選びも重要な要素です。古民家や築古物件では、現代的な設備を無理に入れるよりも、和の要素を取り入れたパーツを組み合わせることで全体の統一感が生まれます。Amazonなどで手頃に入手できる陶器の洗面ボウルを使った事例も披露され、参加者の関心を集めました。
このように、内装の修繕は「プロに頼むべき部分」と「DIYで楽しめる部分」を切り分けることが鍵です。安心を損なう部分は専門家に任せ、そのうえで調和を大切にした工夫を取り入れることが、築古物件を魅力ある空間へと変えていきます。

山口剛

Point of View

「築古物件の改修で迷いやすいのは、どこまで自分で取り組めるかという点です。内本氏の『水回りや電気は必ずプロに』という言葉には深い説得力がありました。その一方で田村氏の『古さに寄り添う工夫が大切』という提案も印象的でした。安全と調和、この二つの視点を意識することが、築古物件を安心かつ魅力的に再生する道筋になるのだと改めて実感しています」

築古物件を魅せるインテリア術|和の要素と現代デザインの融合

築古物件を再生するとき、最も楽しさを感じられるのはインテリアの工夫です。表面的な古さを隠すのではなく、空間の持つ歴史を活かしながら現代的な感性を融合させることで、唯一無二の魅力が生まれます。特に和室や襖、畳といった伝統的な要素は、少しの工夫で見違えるほど空間を引き立てます。
田村氏は軽井沢の別荘を改修した事例を紹介しました。
「腰下の壁だけ壁紙を貼り替えると、全体の印象が大きく変わります。全面をやらなくても部分的な工夫で十分に雰囲気を変えられるんです」
小規模なアプローチでも空間を刷新できることを示す好例でした。
また、襖紙や畳の表替えはコストを抑えつつ印象を変える代表的な方法です。襖に柄物を選んだり、畳表を新調するだけで古さは味わいに変わります。和のテイストを生かす発想は、日本の住文化に根ざす空間でこそ力を発揮します。
さらに注目したいのが「和と洋の融合」です。田村氏はこう語りました。
「和柄の壁紙や障子紙を洋室に取り入れるだけで、空間の印象はがらりと変わります。外国人の方にも人気が高く、民泊やレンタルスペースでは特に効果的です」
従来は洋風に寄せることがおしゃれだと考えられがちでしたが、近年は日本の要素を積極的に取り入れる「ジャパンディ」スタイルも注目されています。
また、色彩の統一も空間を美しく見せる大切なポイントです。壁や天井、木部を同系色でまとめることで線が減り、視覚的にすっきりとした印象になります。築古物件では部材の色がばらばらになりがちですが、塗装やクロスで色を整えるだけで統一感が生まれます。
DIYでも挑戦できる工夫として、マスキングテープと両面テープを活用した壁紙の貼り付けも紹介されました。短時間で雰囲気を変えることができ、借家やイベント会場でも応用可能です。こうした手法は費用を抑えつつ華やかさを演出するのに適しています。
築古物件は新築のような完璧さを目指すよりも、古さを「味」として取り込み、現代的な感性を添えることで輝きを放ちます。和の要素を活かす視点と、部分的なリフォームの柔軟さこそが、築古物件を魅せる最大の秘訣なのです。

山口剛

Point of View

「築古物件の魅力は、決して古さを隠すことではなく、その古さをどう生かすかにあります。田村氏の『和柄を取り入れることで空間が映える』という提案には深く共感しました。和と洋のバランスを調え、部分的な工夫を積み重ねることで、建物は新しい表情を見せてくれます。古さを味わいに変える発想こそが、私たちが未来へ残す住まいづくりの大切な鍵なのだと思います」

編集後記

築古物件の修繕は、単に古さを隠す作業ではなく、建物が持つ時間の重みを味わいに変える営みだと感じます。内本氏、田村氏の実例からは、安全性を守る知恵と調和を生み出す工夫が伝わりました。未来の暮らしを支えるのは、こうした確かな技術と柔軟な発想の積み重ねなのだと改めて思います。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。




​気軽にできる水回り&窓DIYリフォーム|ヤモリサミット2025

気軽にできる水回り&窓DIYリフォーム|プロが教える安全な境界線と実践のコツ

ヤモリサミットで開かれた「気軽にできる水回り&窓DIY相談室」。日々の暮らしの中で、ちょっと手を入れたいと思う場所は誰にでもあるものです。けれど、水回りや窓まわりとなると不安がつきまとうのも事実。今回は、現場を知る経験豊富なプロたちと参加者が共に学び合いながら、「自分でできること」と「プロに任せること」の線引きを探る時間となりました。

相互建装木本氏の講演 水回りDIYに興味をもつ参加者

水回りDIYの境界線

水回りは住宅の中で最も劣化が早く、生活の快適さに直結する場所です。キッチンや洗面台は日々の使用で小さな不具合が生じやすく、表面の色あせや取手の劣化が目立ってきます。こうした部分は、自らの手で改修することで費用を抑えつつ雰囲気を一新できる範囲です。しかし、配管や蛇口といった設備そのものは専門的な知識を必要とし、安易なDIYでは大きなトラブルにつながることもあります。そのため、「どこまで自分でできるのか」という線引きが重要になります。
セッションでは、木本亮 氏が実際の施工事例を紹介しました。青い扉を木目調フィルムに貼り替えただけで、空間全体の印象が温かみのあるものへと変わる。収納扉や取手のリメイクは、大掛かりな工具も不要で、下地を整えたうえでフィルムを貼るだけという手軽さです。参加者にとって、この変化は「自分でもできるかもしれない」と感じさせるものでした。
一方で、配管や水栓の交換はDIYの範囲を超えます。水漏れは目に見えない部分で進行し、修復費用が大きく膨らむ恐れがあります。木本氏は「外観を変える部分はDIYで十分。ただし、機能や構造に関わる部分は専門家に依頼すべき」と明確に線引きを示しました。この冷静な視点は、DIYに挑戦したい人にとって安全な指針となります。
参加者からは「フィルムが経年劣化でめくれた場合、修復は可能か」との質問も寄せられました。木本氏は「一度めくれてしまった部分を取り除き、新しいフィルムを重ねれば問題ない」と回答。工場で貼られた建材も紫外線や湿気で劣化しますが、下地処理を丁寧に行えば再生できるとのことでした。つまり、DIYの可能性は素材の状態を見極め、正しく準備を行うことによって広がるのです。
会場では施工前後の写真が映し出され、その変化に小さなどよめきが起きました。新品への交換に比べてコストを抑えつつ、既存の素材を活かす方法は、環境負荷の低減にもつながります。参加者の多くが真剣な眼差しで説明に耳を傾けていたのは、単なる見た目の改善にとどまらず、持続可能な住まい方を学ぶ機会として受け止めていたからでしょう。
このように、DIYは暮らしを整える手段として魅力的ですが、判断を誤れば余計な出費やリスクを招きかねません。重要なのは「自分の手で変えられる範囲」と「専門家に任せるべき領域」を冷静に見極めること。そのバランスを知ることこそが、安心して住まいを手入れしていく第一歩となります。
山口剛

Point of View

木本氏の施工例を拝見すると、扉や収納の表面を少し工夫するだけで、空間全体が驚くほど変わるのだと実感します。一方で、水回りは見えない部分ほどリスクが潜んでいますね。参加者の皆さまには、安心して続けられるDIYと、専門の方にお願いすべき部分をしっかりと見極めていただければと思います。本日のご説明は、その大切な指針になったのではないでしょうか。

イージーウォールテープなどキッチンや窓周りのDIYに最適

窓枠DIYの可能性と注意点

住まいの中で、窓枠は意外と目に留まる部分です。壁紙をきれいに貼り替えても、枠が古びたまま残っていると全体の印象が損なわれ、どこか整わない雰囲気が漂います。特に中古住宅では、長年の直射日光や結露によって窓枠が傷み、塗装の剥がれや木部の劣化が進んでいるケースが少なくありません。今回のセッションでは、そうした窓枠の補修をどのようにDIYで取り組めるのかが大きな関心事となりました。
木本氏は、粘着式のシートを用いた補修を紹介しました。あらかじめカットされた商品を選び、寸法を確認して上から貼るだけで、古びた窓枠が明るく新しい印象へと生まれ変わる。木目調や白、黒といった豊富なデザインの中から好みに合わせて選べば、部屋全体の統一感を損なうことなく手軽に雰囲気を変えられるとのことでした。会場に映し出された施工例でも、貼る前と後で部屋の印象が大きく変わり、参加者から感嘆の声が上がりました。
ただし、DIYが万能であるわけではありません。窓枠の下地が紫外線や湿気で大きく傷んでいる場合、表面にシートを貼っても十分に密着せず、短期間で剥がれる可能性があります。そのため、下地の状態を見極め、必要であれば剥がれた部分を削って平らにし、パテ処理を行うといった準備が欠かせません。木本氏は「表面の見栄えを整える範囲はDIYで対応できるが、下地の傷みが大きいときは専門家に相談するのが安心」と説明しました。
参加者からは「どこから貼り始めればきれいに仕上がるのか」という質問も寄せられました。これに対して木本氏は「上から下へ、そして窓の内側から外側へ」と答え、材料のまっすぐな端をサッシに合わせて施工することで、無理のない仕上がりになると助言しました。経験に裏付けられたシンプルな指針は、初めて挑戦する人にとって大きな安心材料となったはずです。
さらに議論は、紫外線が与える影響にも及びました。直射日光を受け続ける窓枠はどうしても劣化が早く進みますが、耐久性の高いプロ用フィルムを用いれば、条件にもよりますが3年から5年は十分に持ち、環境が良ければ10年ほど耐えることもあると説明されました。加えて、窓ガラス自体に紫外線カット機能を持つフィルムを施工すれば、枠の保護効果はさらに高まり、室内の快適性も向上するとのことでした。
窓枠DIYは一見小さな補修のように思えますが、その効果は想像以上に大きく、部屋の印象を左右する重要な要素となります。ただし、成功の鍵は「下地の状態を正しく見極めること」にあります。きれいに仕上げたいという気持ちだけで作業を進めるのではなく、素材の健康状態を確かめ、そのうえでDIYに向くかどうかを判断することが欠かせません。そうして選択を重ねていくことが、安心して暮らせる住まいをつくる第一歩になるのです。
山口剛

Point of View

窓枠は普段あまり意識されませんが、部屋の印象を大きく左右する大切な部分だと改めて感じました。フィルムを貼るだけで空間全体が明るくなる一方、下地が傷んでいる場合にはプロに依頼する必要があるというお話は、とても分かりやすい指針だったと思います。参加者の皆さんには、ご自宅の窓を見直すきっかけになれば嬉しいです。

時間いっぱいまでDIYの質問が飛び交う

実践と学びの広がり

セッションの後半では、参加者から生活に直結する質問が次々と寄せられました。キッチン扉の表面がささくれてしまったときの直し方や、洗面まわりのカビ対策、タイル壁の補修方法など、どれも「明日から役立てたい」と思える実践的な内容です。職人の方々は、それぞれの経験を踏まえて分かりやすく答え、会場全体に安心感が広がっていきました。
木本氏は劣化した木部の処理について、「表面をなめらかに削ってから、必要であればパテに木くずを混ぜて補強すると良い」と丁寧に説明しました。湿気を残したままでは割れの原因になるため、ヒートガンなどで十分に乾かしてから施工することが大切だと強調されます。専門的に聞こえる方法でも、手順を守れば家庭で取り組めるもので、参加者は熱心にメモを取っていました。
また、壁紙や家具のリメイクに役立つフィルムについても話題が広がりました。「扱いやすい製品を選ぶことが、成功の秘訣です」との言葉にうなずく声が上がります。特にイージーウォールテープのように貼り直しができる商品は、初めて挑戦する方にぴったりです。少し失敗してもやり直せるという安心感が、DIYへの一歩を後押ししてくれるのです。実際の施工例では、古い家具が短時間で新しい表情を見せ、会場から驚きの声があがりました。
話題は次第に水まわりへ移りました。洗面台や窓枠など、水に触れる場所を扱う際は「表面を覆うだけでなく、隙間をきちんとシーリングすることが長持ちのポイントです」と木本氏は語ります。湿気を残したままではカビを招いてしまうため、乾燥を徹底することが欠かせません。普段は見過ごしてしまう工程にこそ、大切な工夫が隠されているのです。
「木材を使った洗面台を自作したい」という参加者からの声には、「もちろん可能です。ただし防水のためにウレタンで仕上げ、木口はシーリングでしっかり処理してください」との助言が返されました。正しい手入れをすれば長く使えることが伝えられ、参加者の表情は期待に満ちていました。
このように、会場では知識だけでなく、暮らしにすぐ役立つ工夫が次々と紹介されました。DIYに挑戦することは、住まいをより快適にする方法であり、同時に日々の空間に愛着を深める行為でもあります。ただし、すべてを自分で行う必要はなく、専門家に任せることで安心を得られる場面もあります。その境界を見極める大切さを共有できたことが、このセッションの大きな収穫でした。
山口剛

Point of View

生活に直結する質問が多く寄せられたことは、とても意義深いと感じました。DIYは住まいへの愛着を深めるきっかけになりますが、同時に正しい手順や注意点を知ることが欠かせません。木本さんの具体的な助言は、まさにその橋渡しでした。すべてを自分で抱え込むのではなく、任せるべき部分はプロに依頼する。その線引きを学ぶことこそが、このセッションの大きな価値だったと思います。

編集後記

水回りや窓枠のDIYと聞くと、つい不安が先立つものです。けれど今回のセッションを通じて、「自分でできること」と「プロに任せるべきこと」の線引きが驚くほど明確になりました。扉や窓枠の表面を整えるだけで空間が生まれ変わる一方、配管や下地の傷みには専門的な判断が必要です。参加者の皆さんが熱心にメモを取る姿から、住まいへの愛着と学びへの意欲が伝わってきました。正しい知識と適切な判断があれば、DIYはもっと身近で安心なものになる。そう実感できた時間でした。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。




DIYでできる壁紙修繕とプロの境界線|ヤモリサミット2025

小池理事の講演の様子

ヤモリサミット回顧録|壁紙修繕におけるDIYとプロの境界線

ヤモリサミットの司会席に腰を下ろしたとき、会場の空気にふわりと期待感が立ちのぼるのを感じた。
かつて壁紙の修繕は、職人だけの世界にあったもの。
けれど今では、DIYという文化がそっと日常に入り込み、少しずつ暮らしの中に根を張り始めている。

プロの知恵と、参加者たちのまっすぐな好奇心が出会うこのひととき。
いったいどんな発見が生まれ、どんな可能性が顔をのぞかせるのだろう――
そんなことを思いながら、私はそっとマイクに手を伸ばした。

DIYについてのセミナーを聴講する参加者

DIYとプロ、その境界線を探る

このテーマは、会場にいらした皆様にとっても、きっと大きな関心ごとだったはずだ。

住まいを自分の手で整えてみたい、という想いはあっても、
どこまでなら自分で手をかけられるのか。
そして、どのあたりから先はプロの力を借りるべきなのか――
その見極めは、費用や時間の問題だけでなく、仕上がりへの安心感にもつながってくる。

私は司会として登壇者の言葉をつなぎながら、
この「境界線」というテーマの奥行きを、あらためて感じていたところだった。

登壇した 小池光孝 氏は、職人歴30年以上という、まさにベテランのひとり。
その第一声は、ちょっと意外なものだった。
「既存の下地を活かすことが、いちばん効率的で美しいんです」

参加者の多くは、「新しい材料を使ったほうが、きれいに仕上がるんじゃないか」と考えていたようで、
その言葉に、少し驚いた表情を浮かべていた。

けれど小池氏は、穏やかに続ける。
「壁紙なら壁紙、塗装なら塗装。下地に合わせるのが、一番ムダがなくて、コストも抑えられる。
それって、DIYでもまったく同じなんですよ」

さらに印象的だったのは、小池氏が語った“初心者が陥りやすい勘違い”についての話だ。

多くの人が「まずは小さな空間から始めたほうが簡単だろう」と思い、
最初のDIYにトイレや洗面所を選びがちなのだという。
けれど実際は、狭い場所ほど体を動かしづらく、思った以上に作業が進まない。

「むしろ、家具のない広い壁面のほうが貼りやすいし、成功率も高いんです」
小池氏はそう語り、迷いなく言い切った。

その瞬間、会場のあちこちから小さな驚きの声がもれた。
常識をひっくり返すような提案に戸惑いつつも、
理にかなった説明に、ゆっくりとうなずく参加者の姿が印象的だった。

一方で、水まわりの修繕については、少し厳しい現実も語られた。

トイレや洗面台を取り外すとなると、どうしても配管まわりの作業が避けられず、
そこには常に“水漏れ”というリスクがつきまとう。
ほんの小さなミスが、思いがけない損失につながってしまうのだ。

「そこは、迷わずプロに任せてほしい」
小池氏はそう言い切った。

同席していた木本氏も、重ねるように続ける。
「責任の所在が曖昧になるのは、やっぱり危険です。
業者に依頼すれば、万が一トラブルがあっても、しっかり対応してもらえますから」

その瞬間、会場の空気がすっと引き締まったのがわかった。
“DIYの限界”を、冷静に見極めることの大切さが、静かに共有された場面だった。

このやり取りを通じて浮かび上がってきたのは――
DIYのいちばんの魅力は、「自由に挑戦できる」ことにある。
けれどその前提には、「無理をしない」という見極めが欠かせないのだと思う。

どんな材料を選ぶか。どこまでを自分の手でやるか。
そういったことをきちんと見きわめながら、できる範囲で楽しむ。
一方で、水まわりや下地処理のようにリスクの高い工程は、やはり職人に委ねる。

そんなふうに役割を分け合うことで、
暮らしを安全に、そしてもっと心地よく楽しむことができるのではないだろうか。

登壇者たちのやり取りを聞きながら、私はふと、
プロと施主が自然に協力し合う、そんな未来の内装業のかたちを思い描いていた。

山口剛

Point of View

小池氏の言葉には、現場で積み重ねてきた経験の機微が静かににじんでいた。
初心者がつまずきやすいところを丁寧に示しつつ、挑戦する楽しさにもそっと光を当ててくれる。
その気遣いとこだわりに、司会として心から敬意を抱いた。
プロの視点を惜しみなく共有してくださる姿勢こそが、これからの内装業を支えていくのだと、あらためて感じている。

壁紙の貼り方体験も盛況

砂壁とペイント、新しい挑戦のかたち

古い日本家屋や賃貸物件に残る「砂壁」は、多くの参加者にとって避けて通れないテーマだった。

その話題が登壇者の口から出た瞬間、会場の空気がふっと変わる。
観客の表情が一斉に引き締まり、うなずきながら聞き入る姿が、あちこちで見受けられた。

実のところ、私自身もこの話題には特別な思いがある。
砂壁は、見た目には素朴でどこか温かみもある。
けれど、ひとたび劣化が進んでしまうと、ほんの少し触れただけで、ぽろぽろと崩れてしまう。
私たちプロにとっても、何度となく頭を悩ませてきた、手強い相手なのだ。

だからこそ、「DIYでどこまで対応できるのか?」という問いには、
誰もが強い関心を寄せていたのだと思う。

小池氏は、経験豊かな視点からこう語った。
「砂壁は、シーラーやパテで固めようとしても、思った以上に時間も手間もかかるんです。
だから私は、ベニヤで封じ込めてしまう方法が、いちばん現実的だと考えています」

その言葉に、少し驚いた様子で目を丸くする参加者もいた。
多くの人が、「塗って補強するほうが正しい」と思い込んでいたからだろう。
けれど、小池氏の説明が進むにつれ、会場には徐々に納得の空気が広がっていった。

というのも、砂壁の下地にはモルタルやプラスターボード、土壁など、さまざまな種類があり、
それぞれに合わせた対処が必要になるからだ。

倉田氏も「まずは、どんな下地かを見極めることが何より大事です」と語り、
DIYにおいては「作業」だけでなく、「判断」こそが要になるという視点が強く印象づけられた。

話題はやがて、ペイントへと移っていった。

小池氏は、「壁紙の上から塗れるペイントは手軽なんですが、
ホームセンターで手に入る塗料だと、どうしてもムラになりやすい」と語る。

確かに、プロが使うような塗料を選べば、美しい仕上がりも期待できる。
けれど、そこには材料の扱い方や下地処理など、知識と経験が欠かせない。

参加者の多くは、「DIYだからこそ、簡単にできる方法」を求めていた一方で、
「せっかくなら、ちゃんと美しく仕上げたい」という思いも捨てがたかった。
その両方を叶えたいという願いが、このテーマをより深く、複雑なものにしていった。

私は司会者として、このやり取りを見守りながら、静かに思っていた。
内装の世界には、確かに新しい風が吹き始めている。

DIYは、単なる“節約の手段”ではなく、
“暮らしを楽しむ文化”として、少しずつ受け入れられはじめているのだ。

壁紙を自分の手で貼ってみる。
ペイントで部屋の雰囲気を変えてみる。
そんな小さな挑戦が、住まいへの愛着を育み、日々の暮らしを少しずつ豊かにしてくれる。

けれどその一方で、砂壁のように手ごわい素材もある。
DIYだけでは難しい領域が、たしかに存在している。

だからこそ、「ここはプロに頼もう」と判断する勇気もまた、
安全で心地よい住まいづくりには欠かせない要素なのだと、あらためて感じていた。

このセッションを通じて、参加者の多くが気づいたのではないだろうか。
「どこまで挑戦し、どこからプロに託すか」――そんな視点が、これからの住まいづくりには欠かせないということに。

DIYでできることを楽しみつつ、難しい部分は無理をせず、プロの手にゆだねる。
その柔軟な考え方こそが、これからの内装業に新しい光をもたらしてくれる。
私はそう信じて、セッションの余韻を噛みしめていた。

山口剛

Point of View

砂壁やペイントといった難しいテーマに対しても、小池氏は実直で誠実な視点を示してくださいました。
下地の種類をひとつひとつ丁寧に説明しながら、DIYの可能性と限界を、分かりやすく伝えてくださったことに感謝しています。
材料選びのひとつにまでこだわりが宿っていて、その姿勢こそが参加者にとっての大きな学びであり、
これからの内装業を支えていく、ひとつの指針になると感じました。

特設会場に設置されたミューラル、マスキングテープの下地とは思えない出来栄え

道具と知識が未来をひらく

プロの世界を支えてきたのは、確かな手技、そして何より“道具”の力だった。

会場に展示された「壁紙道具7点セット」の前では、多くの参加者が足を止め、
カッターやローラー、ブラシなどの道具を、興味深そうに手に取っていた。

整然と並んだその姿は、DIY初心者にとっては頼もしい味方のようであり、
プロにとっては長年ともに歩んできた、馴染み深い相棒のようでもあった。

その光景を眺めながら私は、
こうした道具の普及が、これからの内装の現場に、またひとつ新しい変化をもたらすのだろう――
そんな予感を、静かに抱いていた。

小池氏は、「この7点セットがあれば、基本的には大丈夫です」と迷いなく断言し、
道具選びに不安を抱えていた参加者たちの表情を、ふっとやわらげた。

なかでも印象的だったのが、カッターに関するアドバイスだ。
「大きな段ボール用ではなく、小さくて薄い刃のものを使うと、仕上がりが格段にきれいになります」
そう語る声には、細部へのこだわりと実感が込められていた。

その言葉に、多くの参加者が深くうなずきながら耳を傾けていた。
ただの“道具”ではなく、それを選ぶ視点こそが、仕上がりを左右する――
そんな気づきが、静かに会場に広がっていくのが感じられた。

質疑応答の時間には、こんな質問が投げかけられた。
「糊付き壁紙と、通常の壁紙では、接着の強さに違いはありますか?」

これに対し、小池氏は迷いなく答えた。
「実は、糊付きのほうがむしろ均一に貼れて、DIYには向いているんです」

プロが使う壁紙は、施工前に機械で糊を塗布するのが一般的だが、
DIYではその工程がムラになりやすく、仕上がりに差が出てしまう。
その点、あらかじめ糊がついている壁紙なら、作業がスムーズで、失敗も少なくて済む。

小池氏のその一言に、参加者たちはほっとしたような表情を見せた。
肩の力が抜けたのか、会場の空気がふんわりとやわらいだ瞬間だった。

さらに小池氏は、クッションフロア選びについても、こんなアドバイスを添えた。
「広い幅のものより、少し狭めのタイプを選んだほうが、初心者には扱いやすいですよ」

プロであれば、広幅の材料も難なく扱える。
けれど、慣れない手にはその大きさがかえって負担になり、思わぬ失敗につながることもある。
その微妙な“さじ加減”に寄り添った助言に、参加者たちは真剣な表情で耳を傾けていた。

司会としてこのやり取りのすべてを見届けながら、私は次第に確信するようになっていた。
内装の世界には、たしかに新しい時代が訪れつつある――と。

道具や知識が広く共有されることで、
誰もが住まいづくりに参加できる。そんな時代が、静かに、でも着実に近づいているのだ。

DIYが広がることで、プロの仕事が奪われるのではないか――
そんな不安の声もあるかもしれない。
けれど、実際にはその逆だと私は思っている。

自分の手で壁を貼り替え、空間を整える。
そんな経験を通して、暮らしへの愛着は深まり、
やがてプロに依頼する際の理解も、目線も、確実に変わっていく。

そうした往復が生まれ、信頼が育ち、
プロの領域は、もっと高度に、もっと創造的に磨かれていくはずだ。

この循環こそが、これからの内装業を豊かにしていく。
私は、そう信じてやまない。

山口剛

Point of View

小池氏が示してくださった道具選びの工夫や、糊付き壁紙の活用法には、初心者へのあたたかな配慮が感じられました。
細かな部分にまで宿るこだわりを惜しみなく伝え、参加者の不安をそっと安心へと変えてくださったことに、深く感謝しています。
その姿勢にはプロとしての矜持がにじみ、内装の未来を照らす静かな灯のように映りました。

編集後記

このセッションを振り返りながら、改めて感じたのは――
「住まいに自分の手を加える喜び」と、「プロに託す安心感」、そのどちらもが暮らしにとって欠かせないということ。

DIYの挑戦をあたたかく受けとめつつ、
細部に宿るこだわりや工夫を、惜しみなく語ってくださった登壇者の皆様。
その言葉のひとつひとつが、会場にいた誰かの背中をそっと押していたように思います。

あの時間に交わされた声が、それぞれの暮らしの中で、
少しずつ形になっていくことを願って――。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。




[視察] ヌルデニム 端材から広がる内装材の未来──現場の熱気とアップサイクルの挑戦

デニム端材を塗り壁にしたヌルデニム

ヌルデニム──デニム端材を活かしたアップサイクル建材の可能性

日本の内装業界は、常に「廃棄」という宿命を抱えてきた。材料を使い切れず余剰が出る。施工の過程で出る端材は行き場を失う。だが、廃材を「ゴミ」ではなく「資源」として活かす取り組みが芽吹き始めている。卵殻を壁材に変えた日本エムテクスは、さらにデニム端材に着目し、新しい左官材「ヌルデニム」を生み出した。ワークショップの現場を追うと、笑いと苦労の交錯する中に、内装の未来を拓く手応えが見えてきた。今回は内装業における「アップサイクル」についてのレポートです。

アップサイクルで社会貢献を

デニム端材が内装材に生まれ変わる

デニムは丈夫で風合いがあり、ファッションでは長く愛されてきた。一方で縫製工場からは大量の端材が発生し、その多くは廃棄される。日本エムテクスは、卵殻をパウダー化して「エッグウォール」を開発した経験を生かし、繊維廃棄物の活用に踏み込んだ。瀬戸内デニムと協働し、砕いたデニム繊維を漆喰状の左官材に混ぜ込み、壁に塗り上げられる新素材「ヌルデニム」を誕生させたのである。

岡本氏は語る。
「案件ごとに試作するだけでは“きれいごと”にすぎません。流通に乗せ、量をさばける仕組みがあって初めて、廃材活用が業界の解決策になります」

挑戦はまだ途上だが、「捨てられる運命」にあった素材が、空間を彩る内装材へと生まれ変わる。その意義は大きい。
































山口剛

Point of View

「大量廃棄の宿命に挑む姿勢は、業界全体の希望になる。デニムのように愛されてきた素材が、もう一度住空間を彩るのなら、我々も新しい誇りを得られるはずだ。」

日本エムテクスでDIY体験

ヌルデニムのワークショップ、笑いと叱咤の渦中で

この日の体験ワークショップ。会場には職人など多様な人々が集まり、ヌルデニムを壁に塗る体験に挑戦した。

「指が痛い!」
「厚みを揃えるのが難しい」

あちこちから声が上がる。見守っていた年配の職人からは手厳しい叱咤が飛ぶ。
「素人のアレンジはいらん!まずは王道を極めろ!」

笑いが起こりながらも、会場の空気は真剣そのもの。岡本氏が実演を交え、厚みの基準を解説する。
「下塗りで0.5ミリ、仕上げで1ミリ程度。乾くと厚い部分が痩せ、自然なテクスチャーが浮かび上がります」

参加者の一人は首をかしげる。
「塗りたてと乾いた後の色味、その差を読むのが本当に難しいですね」

確かに、デニム特有のインディゴブルーは乾燥過程で表情を変える。某自動車メーカーのコーポレートカラーを再現した事例では、その色合わせに大きな苦労があったという。

やがて会場はユーモラスな発想の場にも変わる。
「マグネットを仕込んで冷蔵庫に貼れるうさぎを作ろう」
「モザイクタイルのように剥がして貼るのはどうか」

遊び心に満ちた提案は、素材の柔軟性を示す証でもあった。
































山口剛

Point of View

「笑いと叱咤の混じる場でこそ、素材は“生き物”になる。参加者が一緒に試行錯誤し、デニムが空間に息を吹き込む瞬間を共有した。この熱気を、業界の力に変えていきたい。」

調湿性とデザインを兼ね備えたヌルデニム

施工のリアル──DIYと責任施工のあいだ

ヌルデニムは「デザイン性に特化した左官材」としての魅力を放つ。しかし施工現場には現実的な課題が横たわる。

「天井は落ちやすい。壁面なら安定するが、薄塗りを二度重ねないと難しい」
「乾燥の進行が違うと、午前に塗った面と午後に塗った面で質感が変わってしまう」

岡本氏は体験談を交えて語る。施工は一気呵成に仕上げねばならず、半日の休憩が命取りになることもある。DIY志向のユーザーにとっては挑戦的だが、一方で 責任施工 の体制を整えることで職人の仕事が確保される。流通面でも、内装業者を介して適正な価格と責任施工を両立させる仕組みづくりが議論された。

「調湿性能で売るのではなく、まずはデザイン材として位置づけるべき」
参加者の一人がそう指摘すると、会場の空気がうなずきに変わった。性能を過剰に謳うのではなく、デザイン性を軸に据える。それがヌルデニムを長く定着させるための現実的な道筋である。

山口剛

Point of View

「DIYでも扱える間口を持ちながら、責任施工で職人の腕を生かす──その両立が業界の未来だ。ヌルデニムは、そのバランスを探る“試金石”になるだろう。」

開発技術がSDGsの根源

やらない善よりやる偽善──業界に広がる連帯の兆し

議論の終盤、岡本氏はこう言った。
「僕らがやっていることは、大した量にはなっていないかもしれません。でも、誰かの気づきのきっかけになれば意味がある。やらない善より、やる偽善。まずは動くことが大事なんです」

その言葉に、参加者の多くが静かにうなずいた。内装業界が抱える廃材問題は一社の努力では解決しない。だが仲間が増えれば可能性は広がる。

某自動車メーカーのショールーム施工、非住宅施設での導入事例など、ヌルデニムは既に新しい舞台に立ち始めている。今後は二酸化炭素吸収型タイルなど、さらに持続可能性を追求する素材開発も視野に入るという。

ヌルデニム視察などフィールドワークを重視している

山口剛

Point of View

「“やらない善よりやる偽善”。その言葉は、業界にとって合言葉になる。廃材の再生を笑われてもいい、まずはやる。その積み重ねが、循環型社会を現実にする力になる。」

編集後記

廃材に価値を見いだし、内装業界に新しい可能性を示す取り組み。それは一社や一人の挑戦ではなく、業界全体で取り組むべき課題である。
NPO法人住環境工事研究会は、この活動を広げる仲間を求めている。キャッチコピーは「日本の住環境をオモロく」。廃材を資源に変え、職人と設計者、メーカーと施工者が手を取り合う。そんな未来を共につくるために。

山口 剛 株式会社遠藤紙店

Author:山口剛

プロフィール

## 活動概要

山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。

「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。

## 経歴

1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。

## 個人について

家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。