
寝屋川市空き家流通促進税が示す建築業界の転換点
記事紹介
寝屋川市が全国初となる空き家流通促進税の条例案を議会に提出しました。市内の居住実態のない空き家所有者に新たな税負担を求める制度で、固定資産税の35%を課税対象としています。空き家の流通促進と所有者の行動変容を目指しています。
元記事
概要
事実:寝屋川市が空き家流通促進税を提出し、居住実態のない住宅所有者に固定資産税の35%を課税する制度を導入予定
構造:新規開発用地が限定され、市場に出ていない空き家が約6,400戸ある中で、放置を防ぎ流通を促進する仕組み
影響:所有者は売却・賃貸・除却などの行動を迫られ、建築業界には建物調査から内装改修、商品化まで総合的な支援が求められる
変化:同様の課税制度が全国に波及する可能性が高く、地方自治体と民間・NPOが連携した空き家対策の総合的な支援体制構築が急務となる
当NPOの理事がこのニュースを分かりやすく解説

山口剛
山梨県を拠点に壁紙卸「遠藤紙店」とWALLPAPER STOREを率い、壁紙で暮らしを豊かにするNPO理事。
寝屋川市空き家流通促進税が示す建築業界の転換点
本件により業界は何が変わるのか
受け皿としての事業性が顕在化する
寝屋川市の空き家流通促進税導入は、建築業界にとって重要な転機をもたらします。これまで空き家対策は行政の「問題処理」として扱われてきましたが、本制度により所有者が能動的に行動を起こすインセンティブが生まれるため、業界には確実なニーズが発生するようになります。1
具体的には、所有者が売却・賃貸・除却のいずれかを選択する際、建物調査、雨漏り修繕、家財整理、内装改修といった一連のサービスが市場化されることになります。2現在、多くの業者が個別対応していた工事が、明確な「課題解決プロセス」として体系化される可能性があります。これは効率化と標準化を促す力学となるでしょう。
この動きの本質はどこにあるのか
行政が市場メカニズムに舵を切った意味
従来、空き家問題は「景観悪化」「防犯リスク」といった外部性の問題として扱われ、行政が強制執行で対応するケースが増えていました。しかし本制度は異なる視点を採用しています。所有者に対して「放置するコスト」を明示することで、主体的な判断と行動を促す設計になっているのです。3
この転換は、建築業界の事業構造に直結しています。寝屋川市の状況として、約1万5,450戸の空き家のうち、約6,400戸が市場に出ていないのが実態です。4これらが市場に放出される際、単なる「工事受注」ではなく、「不動産の再生・商品化」というより高度なサービスが必要になります。業界は診断から企画提案、実行まで、より包括的な役割を担うことになるのです。
建築業界は今後どこに向かうのか
統合型サービス提供者への進化が不可避
本制度の全国波及が想定される中、建築業界は単なる施工業者から「空き家問題の総合的なソリューション提供者」へのシフトを迫られます。5
重要なのは、税制度により「動く所有者」と「動かない所有者」が二極化することです。相続問題や登記整理の課題を抱える物件では、税金だけでは解決しません。こうした複雑な案件こそが、業界の真の競争力を問う場になります。
同時に、地域コミュニティの活動拠点化、地域創業支援といった新たな用途転換への対応も求められるようになるでしょう。建築技術と事業企画力を統合した、より戦略的なプレイヤーが市場での主導権を握る時代が到来することになります。

Author:山口剛
プロフィール
## 活動概要
山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。
「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。
## 経歴
1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。
## 個人について
家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。