
主要4社の決算が示す、内装業界のコスト構造の限界と次の一手
記事紹介
サンゲツ・トーソー・ロンシール工業・リリカラの2026年3月期決算が出そろった。各社とも売上は増加したが、リリカラは経常・純利益が減少。原材料費や為替リスクを背景に、今後の利益確保には不透明感が漂う。
元の記事
概要(4つの視点)
- 何が起きたか(事実) 内装インテリア主要4社の決算が発表され、各社とも売上高は増加したが、リリカラは経常・純利益が減少した。
- 本質(構造) 販売価格改定や需要維持により売上は伸びているものの、原材料費・物流コスト・為替変動の影響が利益を圧迫する構造が顕在化しつつある。
- 現場への影響(影響) 材料価格の変動により長期見積もりの維持が困難になっており、工事店には見積有効期限の設定や材工分離請求など、コスト管理の精緻化が求められている。
- 今後どうなるか(変化) 7月の価格改定や為替・物流コストの上昇が時間差で波及する見込みで、適正価格の設定と透明性ある請求対応が業界全体の持続可能性を左右する局面に入る。
当NPOの理事がこのニュースを分かりやすく解説

山口剛
山梨県を拠点に壁紙卸「遠藤紙店」とWALLPAPER STOREを率い、壁紙で暮らしを豊かにするNPO理事。
住宅業界の決算から市況を予測する
■ 本件により業界は何が変わるのか
「増収」が当たり前でなくなる時代へ
サンゲツ・トーソー・ロンシール工業・リリカラの2026年3月期決算が出そろった。売上高はいずれも前年比増と、表面上は堅調に見える。しかし注目すべきは、リリカラの経常利益が前年比32.8%減という数字だ。売上が伸びても利益が残らない構造が、一部で現実のものになりつつある。
各社が今期の見通しとして「増収を見込む一方、利益はやや慎重」と揃って示したことは、業界全体への警告として読み取るべきだろう。増収イコール健全経営という方程式は、すでに成立しにくくなっている。
■ この動きの本質はどこにあるのか
コスト構造の「見えない歪み」が表面化している
内装インテリア業界のサプライチェーンは、メーカーが製造し、流通が卸し、工事店が施工するという多層構造だ。各社の決算が示しているのは、このチェーンの中で原材料費・物流コスト・為替変動というリスクが、どこかに押し付けられながら吸収されてきた実態である。
特に建材は、製造から実際の施工まで1年以上かかるケースも珍しくない。発注時と施工時で為替や原材料費が大きく変動すれば、企業努力だけでは吸収しきれない損失が生まれる。今回のリリカラの利益減少は、その構造的な限界が数字に出た一例と見ることができる。
また、工事店レベルでは「材工一式いくら」という見積慣行が根強く残っており、材料費と施工費が分離されないまま価格変動リスクが曖昧に処理されてきた。この慣行が、業界全体のコスト可視化を阻んできた一因でもある。
■ 建築業界は今後どこに向かうのか
適正価格と説明責任が、事業継続の条件になる
7月には複数メーカーで価格改定が予定されており、為替・輸送コスト・保険料の動向次第では、さらなる波が来る可能性がある。現時点の各社業績は堅調だが、これは「過去の受注」を反映したものに過ぎず、足元の仕込みコストが利益に反映されるのはこれからだ。
工事店が今すぐ取り組むべきことは明確で、見積の有効期限を設定すること、そして材料費・施工費・運送費・管理費を分離して提示することだ。これは単なる価格転嫁の話ではなく、何にいくらかかるのかを社会に説明できる体制を整えることでもある。
業界の持続可能性は、誰かが無理にコストを飲み込み続ける構造から脱却できるかどうかにかかっている。適正価格の実現は、現場の職人を守ることであり、業界全体の信頼性を高めることでもある。その第一歩として、今回の各社決算を「他社の話」として流すのではなく、自社のコスト管理と請求設計を見直す契機にしてほしい。

Author:山口剛
プロフィール
## 活動概要
山梨県出身。家業である壁紙卸売業を継承しながら、壁紙専門店「WALLPAPER STORE」のウェブ編集者として従事。幼少期より壁紙という素材に親しみ、成人後にその真の魅力を認識。「空間を一変させる壁紙の力」に感銘を受け、家業の発展とともにインテリア業界における新たな事業展開を開始した。
「WALLPAPER STORE」においては、壁紙の魅力をより広範囲の顧客層に訴求するため、ウェブサイトおよびSNSを通じた情報発信を担当。DIY愛好家のチームメンバー、ならびに施主の要望と生活様式に寄り添いながらインテリア空間を共創する「ウォールスタイリスト」と連携し、初心者にも取り組みやすいアイデアをブログおよび各種コンテンツを通じて提供している。
## 経歴
1983年、山梨県甲府市生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)卒業後、株式会社インテリジェンス(現:パーソルキャリア株式会社)に新卒入社。事業企画部門において、中期経営計画の策定、予算管理、プロジェクトマネジメント等に従事。関連会社の統合、事業譲渡、合弁会社設立等、多岐にわたる企業戦略業務に携わり、豊富な実務経験を蓄積した。
## 個人について
家族との時間を大切にし、週末は息子のサッカー活動に積極的に参加している。また、浦和レッズの熱心なサポーターとして、週末のテレビ観戦を楽しみとしている。